人の心に灯をともす 3855 日本一おかしな公務員

【日本一おかしな公務員】3855



塩尻市役所地方推進係長、山田崇氏の心に響く言葉より…


長野県の塩尻市役所でシティプロモーションを担当する私は、毎年たくさんの講演をこなしています。

講演や対談、大学での講義なども含め、2018年度は年間231回も人前で話をしました。

地方自治体の公務員、民間企業のビジネスパーソン、学生など、話す相手はさまざまですが、反応がいいのは、こういう話です。


PDCAサイクルという考え方があります。

計画し(PLANのP)、実行し(DOのD)、確認し(CHECKのC)、行動する(ACTIONのA)。

この4工程をくり返すことによって、どんどん業務を改善していく。


もちろん、工場で何かを作るようなときには、非常に有効な手法なのです。

しかし、いま日本社会が直面している少子高齢化、過疎化、生産人口の減少、医療費の増大…といった問題には、PDCAは使いにくい。

どこに本質的な問題があって、何を解決すればいいのか、ほとんど特定できていないからです。

特に行政は、まずは計画をたてるのが仕事です。

きちんとPを作ろうとするあまり、そこで足が止まってしまう。

コンセプトが決まってからやろうと考えると、一歩も前に進めなくなる弊害が出てくる。


そこで私は、もうPを飛ばしてしまうことにしました。

「なんか面白そうだから、とりあえずやってみよう」

ここからスタートするのです。

Pを飛ばして、Dから始める。

何かを始めると、当然、誰からからチェックを受けます。

「何やっているんだ!」と叱られることも多い。


私にとってのAは、謝る(APOLOGIZE)のAなのです。


謝って軌道修正すると、ぼんやりとPの形も見えてくる。

そこで次のサイクルに入る。

また叱られる。

また謝れば、さらに精度の高いPができる。

これを高速でくり返していると、まるで最初からPが存在したかのように見えます。


「どうして、そんなアイデアを思いついたの?ひょっとして未来が読めるの?」

そんな風に誤解してくれます。


何のあてもなくスタートするわけですから、当初は奇異な目で見られます。

「公務員のくせに何を考えているんだ!」と怒鳴られることもある。

でも、徐々に周囲の反応は変わっていきます。

1回やるだけなら「変なことをやったやつ」で終わるのです。

でも、くじけず何度もやっていると、「よくわからないけど、根気だけはあるやつだな」とか「意外とまじめなんだな」とか、評価が変わっていく。

また誤解してくれる。


ここで大切なのは、意気ごんで「大きなDO」を考えないことです。

失敗したときのダメージが大きいという理由もありますが、何より問題なのは、そこで足が止まってしまうからです。

大きなPを構想するのと同様、大きなDOをやろうとすると、始める前に足がすくんでしまう。

結局、やらないで終わってしまう。

だから、「小さなDO」で気軽にスタートするほうがいい。


どんなことでも、やってみれば見えてくるものがあります。

何かしらの発見がある。

それが次のDOにつながっていく。


チップ・ハースとダン・ハースが書いた『スイッチ!』という本に、面白い話が出てきます。

アメリカの洗車場で2種類のサービスカードを用意して、どちらのカードが早くコンプリート(完結)されるか調べた実験です。

ひとつは、8個のスタンプが押されたら、1回分が無料になるカード。

もうひとつは、10個のスタンプで1回ぶんが無料になるのだけれど、最初から2個のスタンプが押されているカード。


どちらも8回の洗車で無料になる点では変わらない。

ところが、後者のカードのほうが、スタンプが埋まって回収される率は高かったのです。

すでに2個押してあるほうが、みんな「残りの8個も埋めてやるぞ!」とやる気を出す。

すでに1歩踏み出している人のほうが、次の行動に移りやすいということです。


だから、小さな一歩であっても、とりあえず踏み出しておく意味は大きい。

その一歩自体が、次の一歩を引き出してくれる。

だから私は、ハードルを思い切り下げた「小さなDO」を推奨するわけです。


とはいえ、何の目的もないのに「面白そうだ」というだけで動くことは、公務員には許されません。

そこで私は、ひとりの個人として動くことにした。

1週間のうち、40時間は市職員として働く時間ですが、残りは128時間もある。

時間外の128時間を使えば、どんな冒険でもできる。


『日本一おかしな公務員』日本経済新聞社





本書の中にこんな面白そうなことが紹介されていた。

『塩尻市の大門商店街にある空き家を借りました。

世の中では「空き家問題」が騒がれている。

でも、いったい何が問題なのかわからないので、自分自身が当事者になってみたのです。

最大で6軒借りました。

使うあてがあったわけではありません。

「空き家っていったい何だろう?」という疑問に突き動かされただけです。

本質を知りたかった。

その結果、「空き家“問題”なるものは存在しない」という結論にいたるのですが…

この空き家プロジェクトは、「nanoda(ナノダ)」というプロジェクトに発展していきます。

「〇〇なのだ」と銘打てば、そこでどんなことをやってもいい。

2019年5月末時点で、もう417回も開催しています。

「朝食なのだ」「ワインなのだ」「無限からあげなのだ」「カンバンなのだ」「視察受け入れなのだ」「広島東洋カープなのだ」「哲学カフェなのだ」「ぐるぐるカレーなのだ」「島なのだ」「カツサンドなのだ」「コミュニティラジオ放送局なのだ」…。

何かやりたいという人がいたら、どんな企画でも私が伴走します。

空き家の大家さんたちと交渉して掃除をさせてもらい、終わったら大家さんも交えて食事をする「お掃除なのだ」も、大人気のイベントでした。

続けていると、「なんか面白そうだ」と話題になり、ふだんは商店街に足を運ばない若者たちも通ってくるようになります。

メディアで紹介されたこともあって、長野県外から遊びにくる人も現れた。

移住してきた人もいる。

シャッター商店街の再生とか、若者の移住促進とか、大きなPを構想していたら、こんな展開にはならなかったと思います。』


人は、理屈や理論では動かない。

それがどんなに正しい考え方であったとしても、説得されたとしても動かない。

人が動く時は、「面白そう」「楽しそう」「好き」といった、自分の感性に響いたときだ。

「感動」という言葉もそうだが、感じるから動く。

理屈ではないのだ。


現代は、AIやITといったデジタル全盛の時代だ。

だからこそ、今は、人の琴線にふれる物語やストーリーに飢えている。

だが、多くの人は、それをわかりやすく「見える化」してくれないとわからない。

だから、「ああ、自分が求めていたのはこれだった!」と感動する。


旧来の殻を破って行動することは、とてもハードルが高い。

それが古くからの固い職業であればあるほどそうだ。


「なんか面白そうだから、とりあえずやってみよう」

とにかく、小さな一歩を踏み出すこと、行動すること…

面白いことに次々と挑戦できる人でありたい。






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