人の心に灯をともす 4574 小さな塾のような小学校を

【小さな塾のような小学校を】4574



渡部昇一氏の心に響く言葉より…


エジソンの少年時代、頭から叱りつけられると、鞭(むち)で叩いても頑として言うことを聞かない子供だった。

当時のアメリカの小学校教育はすこぶる幼稚で、ただ鞭で叩いて教え込むような詰め込み主義だったらから、エジソンには全く合わなかった。

8歳で学校に入学したエジソンは、いつも石盤に絵を描いたり、よそ見ばかりして、ときには突拍子もない質問をして先生を困らせた。

先生に質問されると、今度はいくら鞭で脅かされても返事をしない。


同級生はエジソンを低能児と呼び、成績はいつもビリだった。

入学後3ヵ月ぐらい経ったある日、先生は生徒一同の前で「エジソンは馬鹿だ」といった。

エジソンは家に帰ると母親に向かって、

「先生が僕のことを馬鹿だといったので、もう学校には行きません」

と宣言した。


母親はかつて小学校の先生をしていたことがあり、正しい教育の方法を知っていた。

だから、先生のエジソンの扱い方に怒って、エジソンを学校へ連れて行って先生に抗議した。

「あなたの教育法は間違っています。失礼ながら、この子はあなたよりずっと頭脳があります。今後、この子は家で私が教育して、立派な人間にしてみせます」

そしてエジソンを退学させてしまった。


それから母親は、エジソンが興味を持ち、その性格に合ったものを選んで勉強させ、その能力を十分に発揮させるよう、暖かい愛情で指導した。

そのかいあってエジソンは、12年間の間に、近所のどの子供も遠く及ばないほどの優等生になった。

博識、勤勉、努力、忍耐、誠実等、エジソンを発明王にした基礎は、このときに築かれたのである。


大成してから、エジソンはいつもこういっていた。

「私の今日あるのは、全く母の賜物である」

彼はまた、母親の教育について、こういっている。

「小学校の先生が私を馬鹿だといったとき、最も強く弁護してくれたのは母親であった。母は私を心から信じていたのだ。そのとき私は、母親の期待する人物になり、母の確信に背かぬことを事実の上で示そうと堅く決心した」


子供が先生に合わないという悩みは、多くの親が感じていることに違いない。

しかし、現在の学校制度では、子供に先生を合わせることは不可能であるといっていい。

その結果、伸びるはずの多くの才能が潰されたり、埋もれたりしているはずである。

これは、子供や親だけでなく、国全体にとっての大きな損失であるといえるのではないか。


私は、小さな無数の塾があってもいいという立場をとる。

今の学校制度に満足できる子供はそれで結構だが、合わない子供もたくさんいる。

そういう子供が能力を伸ばそうとすれば、合う先生に付くより仕方がない。

黒柳徹子さんが『窓際のトットちゃん』で描いたように、彼女は普通の学校制度には合わなかった。

そんな彼女を引き受けてくれた小さな塾がトモエ学園だったわけである。

トモエ学園は払い下げの電車を使った学校だったけれど、そういう学校がたくさんあっていいと思うのである。


こういう学校が自由につくれなくなったのは、昭和15年以後の日本の小学校教育の悲劇である。

昭和15年に、日本の文部省はヒットラーの教育法を参考にして国民学校をつくった。

ドイツの小学校は「フォークスシューレ」というが、これを直訳したのが「国民学校」なのである。

そのため私も、小学校5年までは「小学校」で、6年になったら「国民学校」の生徒になった。

しかし、国民学校では、トットちゃんのような教育は決してできない。


国民学校をつくるにあたって、文部省は当初、私立の小学校はすべて潰してしまおうという方針を持っていた。

しかし私立の学校が団結して、学校の存続を文部省に申し入れた。

そこで文部省は、「あるものはしょうがない」という態度をとって一応はこの申し入れを認めたが、空襲で焼けた学校の再建は許さなかった。

戦争が終わってみると、私立の小・中学校を求める声は非常に多かったのに、新しい私立学校はなかなかできなかった。

例外的にできたのは、大学付属の高校、中学、小学校くらいのものである。

こうした流れは今もって続いている。


私はかつて調べたことがあるのだが、小学校をつくるための設置基準は特に定められているわけではない。

だから、本来なら、どんな小さな塾でもつくれるはずである。

ところが東京都などは、都の条例で、小学校も高等学校に準じるという設置基準を設けている。

そうなると、運動場をつくらなければならないとかいろいろ大変なことになって、事実上、小さな学校はつくれないことになってしまうのである。


エジソンの場合は、たまたま母親に教師の経験があり、エジソンにぴったり合った教育を家庭で施したから能力が花ひらいたが、すべての子がこうした環境に恵まれているわけではない。

だから、子供にぴったりと合った先生がいるような小さな塾を、たとえ生徒が2、3人でもいいからたくさんつくって、一人ひとりに適した教育ができるようにすればいいのである。

それは不登校問題の解消のみならず、日本に活力を与える道にもなると思う。

今の義務教育制度は、ある意味で戦前よりも遥かに全体主義的で、不自由になっている。

それに大半の国民が気づいていないのは、日本の不幸というしかない。


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「窓ぎわのトットちゃん」(講談社文庫)という女優の黒柳徹子さんの本がある。

トモエ学園で、黒柳徹子さんが受けたユニークで個性を伸ばす教育のことが書いてある。

黒柳さんは公立の小学校一年生のとき、3ヵ月で退学になった。

トットちゃんの一般人の理解を超えた数々の行動に対して、エジソンと同じように、担任の女性の先生から「頼むから他の学校に行ってほしい」と泣きが入ったからだ。

授業中なのに窓際に立って、通りのチンドンヤさんを呼び込んだり、学校の軒先に巣をつくっているツバメに大声で話しかけたり、絵を描く時もはみ出して机の上にまでクレヨンをぬってしまったり…


トモエ学園の全校生徒は約50人くらいで、一年生は9人。

教室は払い下げの本物の電車で、席は毎日好きなところにどこでも座ってもいい。

授業は、1日にやる全部の教科のなかから、自分が選んだ好きな教科から始められる。

嫌いな教科も学校が終わる時間までにやればいい。

午前中にみんなの授業が終わると、午後は散歩だ。

東京の「自由が丘」もこの頃はほとんどが畑で、歩きながら花をみたり、虫やヘビを見たり、お寺の境内で遊んだりと、それが理科や、歴史や、生物の授業になっていた。

トットちゃんは、退学になった公立の学校とはまるっきり違って、トモエ学園では、朝起きると早く学校に行きたくて行きたくて、朝が待ちきれなかったという。

そして、学校があまりに楽しかったので、学校から帰ってくると、ママとパパに「今日、学校で、どんなことをして、どんなに面白かったか」を山のように話した。

トモエには生徒一人ひとりが登れる木があって、あれは誰の木と決めていいことになっていて、自分の木に招待したり、よその木に招待されたりしていた。

また、夏休みが始まった日は、全員が講堂に集まり、その中にテントを張って寝る日で、校長先生が、みんなが行ったことがない外国の話をしてくれ、それを「野宿」といった。

校長の小林宗作先生は、トモエ学園を始める前に、外国では、子どもの教育をどんなふうにやっているかを見るために、ヨーロッパに渡り滞在した。

『人の声がうるさいと、自分の勉強ができない』というようじゃ困る。どんなにまわりがうるさくても、すぐ集中できるように!」というのが教室での決まりだったそうだ。

『どんな子も、生まれたときには、いい性質を持っている。それが大きくなるつれ、まわりの環境とか、大人たちの影響で、スポイルされてしまう。だから、早くこの「いい性質」を見つけて、それをのばしていき、個性のある人間にしていこう』というのが小林先生の方針だった。

また、『君たちは、みんな一緒だよ。なにをやるのも一緒だよ!』という小林先生の言葉の通り、体の不自由な子も他のみんなと一緒に授業を受け、トモエ学園に自然に溶け込んでいたという。


人の真似ではなく、一人ひとりの個性を伸ばす教育。


自由を尊重し、自分で考えて、自分のやり方でやる自主性を尊重する教育。

いわゆる「お勉強」ではなく、遊びながら自然に覚え、理解し、行動に結びつける教育。


そしてなにより、小林校長先生の教育方針もさることならが、トットちゃんを全面的に信頼し、認めて伸ばそうとした母親の存在は大きい。

小林正観さんはそれを、こう述べている。


『天才たちが育った家には共通項がありました。

それは同じタイプの母親が存在したということです。

同じタイプの母親とは、子どもを称賛し、いいところを探し、褒めたたえた。

悪いところを上げ連ねて、欠点を指摘して、修正して修正して、それを言い続けるのではなくて、いいところをピックアップして、それを探し、褒めたたえ、さらにまたよいところを探しては、それを褒めたたえたということです。』(啼かなくていいホトトギス/中経の文庫)


今の時代こそ、このトットちゃんが通ったトモエ学園のような小学校が必要だ。

小さな塾のような小学校がたくさんできたら、日本も大きく変わるかもしれない。






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