人の心に灯をともす 4058 ピンピンヒラリ

【ピンピンヒラリ】4058



医師、鎌田實氏の心に響く言葉より…


ある時、僕の内科外来に85歳の男性が、紹介状を携えて、家族とともにやって来た。

彼は悪性リンパ腫で、主治医から抗がん剤治療を提案されており、セカンドオピニオンを求めて僕のところにやって来たのだ。

診療室には男性と息子さんと僕の3人だけ。

孫をはじめ、その他の家族は外で待機してもらった。


男性は、自分の病気のことをきちんと理解していた。

その上で、はっきりと「痛いことはもう嫌だ」と言う。

僕は、男性に「『死』は怖くないですか?」と尋ねた。

すると男性は「もう十分生きました」と答えた。


いわく、男性はこの診療の前に、家族と一緒に諏訪中央病院近くの温泉旅館に泊まり、おいしい料理とお酒を楽しんだそうだ。

男性は「今回の旅行みたいに、もうしばらく楽しい時間を過ごせれば、それで良いんです」と語る。


息子さんは、父親の思いに半ば納得しつつ、どこか腑に落ちない様子だった。

というのも、息子さんは医師で、父親には積極的な治療を受けてもらって、少しでも良くなってもらいたいと考えていたのだ。

それでも、最終的には父親の強い意志を受け入れ、息子さんも納得してくれた。


父子とのそんなやり取りの後、僕は外で待機していた孫たち家族を診療室に招き入れ、こんなふうに話をした。

「いま、おじいちゃん本人が、手術や抗がん剤治療はしないと決めました。ご本人の気持ちを尊重してあげましょう」

家族のその場で受け入れてくれた。

みんなが「これで良いんだ」という顔をしていた。

その様子を見て、男性は嬉しそうな、安堵の表情を浮かべた。

そして僕の手を握って、「ありがとう」と言ってくれた。


診察から三ヶ月ほどが経ったころ、一通の手紙が届いた。

差出人は息子さん。

どうやら、男性は大往生だったそうだ。


最後の瞬間には、看取る家族に対して「ありがとう。思い残すことはないよ。仲良くね」と語ってくれたという。

男性は家族に感謝し、息子さんは父親だけでなく、僕にも感謝をしてくれた。

そんな手紙だった。


まさにPPH、ピンピンヒラリだ。

彼はぎりぎりまでピンピン生きて、ヒラリと身をかわすようにあの世に逝った。

人間はいつか死がやってくる。

もちろん僕にもだ。


最後までやりたいことをやりきる。

そして「グッバイ、サンキュー」といって、ヒラリとあの世に逝けたら、いいなと思っている。

男性は「死」を遠ざけず、人任せにせず、自ら選択した。

まさにこの男性のような“生き方”こそが「死」に向き合うということなのだ。


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鎌田實氏は「コロナ後の新たな世界」についてこう語る。

『新型コロナウイルスの世界的な感染爆発によって、僕たちが暮らす世界は、あらゆる面で大きな転換期を迎えた。

新型コロナは、さまざまな潜在的な課題を顕在化させたのだ。

コロナ後の世界は、新しい価値観や仕組みによって、コロナ以前の世界とは全く別の世界になるはずだ。

その時に、一人ひとりがきちんと「死」に向き合えるようになっているべきだと僕は考えている。

もっと言えば、コロナ後の新たな世界は、もう一度「生」と「死」を捉え直すことから始めるべきなのではないだろうか。

「死」をやみくもに恐れる必要はない。

遠ざける必要もない。

「死」は人生にとって大切な一瞬であり、人生の大事業なのだ。

だからこそ、元気なときに一度、自分流の「死」を考えてみてほしい。

手始めに延命治療をするかどうか。

死ぬ場所はどこがいいか。

一つでも自己決定をしてみると、生き方が人任せじゃなくなる。

自分が人生の主人公になれる。

「死」は「生」を輝かせてくれる。

そう信じている。』


コロナ禍は我々に様々な自己決定を迫った。

それは…

住む場所や働く場所はどうするのか。

友人や仕事の仲間たちとの関係はどうするか。

仕事を存続させるため何をするのか。

自分を高めるためにどうするのか。

人のために何をするのか。


それは、「自分がどう生きるのか」という根源的な問いかけだ。

それは、つまり「どう死ぬのか」という問いかけでもある。


ピンピンヒラリは鎌田實氏の造語。

ピンピンコロリ(PPK)だと、なんだかゴキブリコロリみたいでカッコ悪いからだ。

痛がったり、苦しんだりせずに、家族に手をかけることもなくヒラリと身をかわすように逝く。


「めしを喰って静かに息をついていたら いつの間にか日が暮れて  気がついた時は墓場の中」(相田みつを)

「よく生きることは、よく死ぬことでもある。一生懸命に生きたものは、納得して死を受け容れることが出来る、という意味です」(宇野千代)


ピンピンヒラリと逝く…

よく生き、よく死ぬことができる人生でありたい。






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