人の心に灯をともす 4073 遊ぶ鉄工所
【遊ぶ鉄工所】4073
HILLTOP株式会社、代表取締役副社長、山本昌作氏の心に響く言葉より…
私には、40年以上前から、変わらぬ夢がありました。
「社員が誇りに思えるような“夢の工場”をつくろう」
「油まみれの工場を“白衣を着て働く工場”にしてみせる」
HILLTOP株式会社(以下、ヒルトップ)の前身は、1961年に私の父が創業した「山本精工所」。
自動車部品を製造する小さな町の鉄工所でした。
自動車メーカーの孫請けだった油まみれの鉄工所は、様々な試行錯誤の結果、今や「多品種単品のアルミ加工メーカー」に脱皮しました。
毎日同じ製品を大量生産していた町工場は、「24時間無人加工の夢工場」へと変身。
今のヒルトップに、油まみれで働く社員は、ひとりもいません。
ヒルトップのビジネスモデルは、従来のものづくりとは一線を画しています。
鉄工所でありながら、
●「量産ものは、やらない」
●「ルーティン作業は、やらない」
●「職人は、つくらない」
といった型破りな発想を実現しているのが、ヒルトップの「夢工場」です。
以前、初めて本社にきた人が言いました。
「社員も経営者も、遊びながら仕事をしているようですね。ここは、まさに“遊ぶ鉄工所”ですね」
「ここは何の会社?鉄工所?ありえない!」と言われるヒルトップですが、れっきとした鉄工所です。
しかし、日々遊んでばかりいるわけではありません。
業界常識を一層した生産システムによって、収益構造は大幅改善。
利益率は「20~25%」までアップしました。
一般的に、鉄工所の利益率は「3~8%」ですから、この数字は業界水準を超える「脅威的な数字」なのかもしれません。
この10年間、売上、社員数、取引社数ともに右肩上がりです。
取引先は国内だけでなく世界中で、2018年度末に3000社を超える見込みです。
中にはウォルトディズニー・カンパニーやNASA(アメリカ航空宇宙局)、自動車配車アプリ「Uber(ウーバー)」を運営するウーバー・テクノロジーズなど世界のトップ企業も含まれます。
ありがたいことに、アメリカのとある企業(バイオ医薬品、ゲノム解析および細胞治療向けの製品やサービス提供)から、「ヒルトップの技術力は素晴らしい。その技術を独り占めしたいので、会社ごと買いたい」と言われたこともあります。
おかげさまで、「利益率20%を超えるIT鉄工所」としてテレビなどにも取り上げられ、年間2000人超が、京都府宇治市の本社工場の見学にお越しくださいます。
多くの町工場が姿を消していく中で、ヒルトップが成長し続けているのは、凝り固まった業界の思い込みを捨て、従来の工場のあり方を大きく変えたからです。
私たちはいったい何を変えたのか。
夢工場を実現する過程で、ヒルトップが取り組んだ変革は、たった5つです。
1.「人」を変えた
2.「本社」を変えた
3.「つくるもの」を変えた
4.「つくり方」を変えた
5.「取引先」を変えた
1.「人」を変えた
職人の世界には、「本物の職人」と中途半端な「にわか職人」がいます。
製造業が衰退したのは、「にわか職人」が原因です。
私は本物の職人が大好き。
本物の職人技は本当に美しい。
一方で、私は、にわか職人が大嫌いです。
彼らは、古いしきたりを守ることしか考えていません。
2.「本社」を変えた
「中小企業こそ本社の外観にお金をかけるべきだ」という信念から、2007年12月に京都フェニックス・パークに新社屋を竣工しました。
「地味で暗い」「油まみれで汚い」という町工場のイメージを払拭。
建坪600坪の5階建、東側は全面ガラス張り。
外観はコーポレートカラーのピンク。
4階には社員みんなが集まる社員食堂、最上階には筋トレルームや浴室もあります。
工場内には、最先端の5軸マシニングセンター(240種の刃物を装備したコンピュータ制御の工作機械)もあり、本社を訪れた方の多くが、「鉄工所には見えない」と驚かれます。
3.「つくるもの」を変えた
人口減少時代を迎え、日本から大量生産のニーズは、ほぼ消えました。
これからの小さな会社は、多品種少量生産で生き残っていくしかありません。
とても厳しい時代です。
そこでヒルトップは、大量生産品(量産部品)の扱いをやめ、単品ものに特化しました。
精密機械、医療機械、航空機部品、自転車部品、マイクスタンドなど、アルミ加工製品なら、どんなものでも単品・少量で加工します。
現状は、制作数1~2個の多品種単品が受注全体の8割。
月に3000種類をオーダーメイドでつくっています。
4.「つくり方」を変えた
普通の鉄工所の場合、就業時間の8割が機械の前、2割がデスク仕事ですが、ヒルトップではこの割合を逆にしました。
昼間は、デスクで人がプログラムをつくる。
人が帰った夜中に、機械に働いてもらいます。
これが、私たちが「ヒルトップ・システム」と呼ぶ生産管理システムです。
このシステムには、職人がこれまで追求してきた技の結晶の数々がデータベース化され、機械や工程の決定、プログラム作成のパラメータ(プログラムの動作を決定する数値)の入力を大幅に削減しています。
通常は800項目以上を入力しないといけませんが、このシステムなら、たった25項目ですんでしまいます。
受注から部品製作、納品まで全工程でITが駆使され、多くのプロセスが自社開発ソフトでデジタル化されています。
データを機械に送信すれば、夜のうちに工作機械が稼働し、朝には完成します。
これにより、納期が半分になりました。
受注から納品までの最短日数は、新規受注で5日、リピート受注で3日です。
5.「取引先」を変えた
下請会社の多くは親会社からの受注に依存していますが、親会社次第で受注がゼロになることもある。
こんな状況では、常に不安定な経営を強いられます。
下請けという待ち型ビジネスモデルの行き着く先は、「コストダウン」しかない。
取引先を失うことを恐れるあまり、不利な条件で取引を続けるくらいなら、リスクを背負ってでも自立するべきです。
当社では、1社依存率を30%以下にとどめています。
取引先を分散すれば、1社失っても倒産リスクを回避できます。
ヒルトップでは、取引先が毎年、約100社入れ替わっています。
従来の取引先を失うのは事業の新陳代謝と前向きにとらえています。
だからこそ、どんどん新しいことにチャレンジできるのです。
『ディズニー、NASAが認めた 遊ぶ鉄工所』ダイヤモンド社
https://amzn.to/35wVzpY
山本昌作氏は「製造業の最終目的」についてこう語る。
『町工場に、完成品(見本となる製品)を見せ、「この製品と同じものをつくってほしいのですが、できますか?」と訊くと、たいていは「できる」と前向きな返事が返ってきます。
しかし、「では、お願いします」と完成品だけを置いていこうとすると、途端に顔色が曇る。
「いやいや、これを置いていかれても困ります。図面をください」と。
町工場の多くは、図面があるものはつくれるけど、図面がないものはつくれないので、完成品より図面をほしがります。
しかし、ヒルトップは違います。
図面も完成品も、どちらもいりません。
「こんな感じのものがつくりたい」「こんなことを考えている」「もっと、こうなってほしい」というイメージだけで十分です。
ヒルトップは、依頼されたものだけでなく、みずからが知恵を出しながら、新しいものを創造する。
我々が目指しているのは、「サポーティング・インダストリー」であり、自立した会社として、脱下請け・脱価格競争を推進することです。
製造業の最終目的は「ものをつくること」ではありません。
これからの製造業は「製造サービス業」でないと生き残れません。
なぜなら、「ものづくりをしない製造業」が生まれる可能性があるからです。
ヒルトップでは、お客様の困りごとを解決するため、オーダーメイドの商品開発を展開しています。
上流(ヒアリング・構想デザイン)から、下流(稼働・アフターケア)まで全工程にわたってすべて対応する、極めてめずらしい鉄工所なのです。』
『変化が激しく、不確実性が高い環境下においては、非定型な仕事も多くなり、なにより仕事そのものがだまっていても降ってくるわけではなく、自分なりに探しに行く必要が出てくるのです。
VUCAの時代は「何か良いシステムを提案して」というように仕事を曖昧な形で依頼することも増えてきます。
これがVUCAの時代において問題発見が必要になってくる理由です。』(問題発見力を鍛える/講談社現代新書)より
まさに、ヒルトップの経営は、VUCAの時代において最強の経営手法といえる。
自ら問いを立てることができる会社だ。
しかし、いくら強烈に願っていても、下請け、孫請けから脱却できる会社は少ない。
それを、なかなか行動に移せないからだ。
いま、あらゆる業種業態が生き残るため…
新たな発想が必要となっている。
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HILLTOP株式会社、代表取締役副社長、山本昌作氏の心に響く言葉より…
私には、40年以上前から、変わらぬ夢がありました。
「社員が誇りに思えるような“夢の工場”をつくろう」
「油まみれの工場を“白衣を着て働く工場”にしてみせる」
HILLTOP株式会社(以下、ヒルトップ)の前身は、1961年に私の父が創業した「山本精工所」。
自動車部品を製造する小さな町の鉄工所でした。
自動車メーカーの孫請けだった油まみれの鉄工所は、様々な試行錯誤の結果、今や「多品種単品のアルミ加工メーカー」に脱皮しました。
毎日同じ製品を大量生産していた町工場は、「24時間無人加工の夢工場」へと変身。
今のヒルトップに、油まみれで働く社員は、ひとりもいません。
ヒルトップのビジネスモデルは、従来のものづくりとは一線を画しています。
鉄工所でありながら、
●「量産ものは、やらない」
●「ルーティン作業は、やらない」
●「職人は、つくらない」
といった型破りな発想を実現しているのが、ヒルトップの「夢工場」です。
以前、初めて本社にきた人が言いました。
「社員も経営者も、遊びながら仕事をしているようですね。ここは、まさに“遊ぶ鉄工所”ですね」
「ここは何の会社?鉄工所?ありえない!」と言われるヒルトップですが、れっきとした鉄工所です。
しかし、日々遊んでばかりいるわけではありません。
業界常識を一層した生産システムによって、収益構造は大幅改善。
利益率は「20~25%」までアップしました。
一般的に、鉄工所の利益率は「3~8%」ですから、この数字は業界水準を超える「脅威的な数字」なのかもしれません。
この10年間、売上、社員数、取引社数ともに右肩上がりです。
取引先は国内だけでなく世界中で、2018年度末に3000社を超える見込みです。
中にはウォルトディズニー・カンパニーやNASA(アメリカ航空宇宙局)、自動車配車アプリ「Uber(ウーバー)」を運営するウーバー・テクノロジーズなど世界のトップ企業も含まれます。
ありがたいことに、アメリカのとある企業(バイオ医薬品、ゲノム解析および細胞治療向けの製品やサービス提供)から、「ヒルトップの技術力は素晴らしい。その技術を独り占めしたいので、会社ごと買いたい」と言われたこともあります。
おかげさまで、「利益率20%を超えるIT鉄工所」としてテレビなどにも取り上げられ、年間2000人超が、京都府宇治市の本社工場の見学にお越しくださいます。
多くの町工場が姿を消していく中で、ヒルトップが成長し続けているのは、凝り固まった業界の思い込みを捨て、従来の工場のあり方を大きく変えたからです。
私たちはいったい何を変えたのか。
夢工場を実現する過程で、ヒルトップが取り組んだ変革は、たった5つです。
1.「人」を変えた
2.「本社」を変えた
3.「つくるもの」を変えた
4.「つくり方」を変えた
5.「取引先」を変えた
1.「人」を変えた
職人の世界には、「本物の職人」と中途半端な「にわか職人」がいます。
製造業が衰退したのは、「にわか職人」が原因です。
私は本物の職人が大好き。
本物の職人技は本当に美しい。
一方で、私は、にわか職人が大嫌いです。
彼らは、古いしきたりを守ることしか考えていません。
2.「本社」を変えた
「中小企業こそ本社の外観にお金をかけるべきだ」という信念から、2007年12月に京都フェニックス・パークに新社屋を竣工しました。
「地味で暗い」「油まみれで汚い」という町工場のイメージを払拭。
建坪600坪の5階建、東側は全面ガラス張り。
外観はコーポレートカラーのピンク。
4階には社員みんなが集まる社員食堂、最上階には筋トレルームや浴室もあります。
工場内には、最先端の5軸マシニングセンター(240種の刃物を装備したコンピュータ制御の工作機械)もあり、本社を訪れた方の多くが、「鉄工所には見えない」と驚かれます。
3.「つくるもの」を変えた
人口減少時代を迎え、日本から大量生産のニーズは、ほぼ消えました。
これからの小さな会社は、多品種少量生産で生き残っていくしかありません。
とても厳しい時代です。
そこでヒルトップは、大量生産品(量産部品)の扱いをやめ、単品ものに特化しました。
精密機械、医療機械、航空機部品、自転車部品、マイクスタンドなど、アルミ加工製品なら、どんなものでも単品・少量で加工します。
現状は、制作数1~2個の多品種単品が受注全体の8割。
月に3000種類をオーダーメイドでつくっています。
4.「つくり方」を変えた
普通の鉄工所の場合、就業時間の8割が機械の前、2割がデスク仕事ですが、ヒルトップではこの割合を逆にしました。
昼間は、デスクで人がプログラムをつくる。
人が帰った夜中に、機械に働いてもらいます。
これが、私たちが「ヒルトップ・システム」と呼ぶ生産管理システムです。
このシステムには、職人がこれまで追求してきた技の結晶の数々がデータベース化され、機械や工程の決定、プログラム作成のパラメータ(プログラムの動作を決定する数値)の入力を大幅に削減しています。
通常は800項目以上を入力しないといけませんが、このシステムなら、たった25項目ですんでしまいます。
受注から部品製作、納品まで全工程でITが駆使され、多くのプロセスが自社開発ソフトでデジタル化されています。
データを機械に送信すれば、夜のうちに工作機械が稼働し、朝には完成します。
これにより、納期が半分になりました。
受注から納品までの最短日数は、新規受注で5日、リピート受注で3日です。
5.「取引先」を変えた
下請会社の多くは親会社からの受注に依存していますが、親会社次第で受注がゼロになることもある。
こんな状況では、常に不安定な経営を強いられます。
下請けという待ち型ビジネスモデルの行き着く先は、「コストダウン」しかない。
取引先を失うことを恐れるあまり、不利な条件で取引を続けるくらいなら、リスクを背負ってでも自立するべきです。
当社では、1社依存率を30%以下にとどめています。
取引先を分散すれば、1社失っても倒産リスクを回避できます。
ヒルトップでは、取引先が毎年、約100社入れ替わっています。
従来の取引先を失うのは事業の新陳代謝と前向きにとらえています。
だからこそ、どんどん新しいことにチャレンジできるのです。
『ディズニー、NASAが認めた 遊ぶ鉄工所』ダイヤモンド社
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山本昌作氏は「製造業の最終目的」についてこう語る。
『町工場に、完成品(見本となる製品)を見せ、「この製品と同じものをつくってほしいのですが、できますか?」と訊くと、たいていは「できる」と前向きな返事が返ってきます。
しかし、「では、お願いします」と完成品だけを置いていこうとすると、途端に顔色が曇る。
「いやいや、これを置いていかれても困ります。図面をください」と。
町工場の多くは、図面があるものはつくれるけど、図面がないものはつくれないので、完成品より図面をほしがります。
しかし、ヒルトップは違います。
図面も完成品も、どちらもいりません。
「こんな感じのものがつくりたい」「こんなことを考えている」「もっと、こうなってほしい」というイメージだけで十分です。
ヒルトップは、依頼されたものだけでなく、みずからが知恵を出しながら、新しいものを創造する。
我々が目指しているのは、「サポーティング・インダストリー」であり、自立した会社として、脱下請け・脱価格競争を推進することです。
製造業の最終目的は「ものをつくること」ではありません。
これからの製造業は「製造サービス業」でないと生き残れません。
なぜなら、「ものづくりをしない製造業」が生まれる可能性があるからです。
ヒルトップでは、お客様の困りごとを解決するため、オーダーメイドの商品開発を展開しています。
上流(ヒアリング・構想デザイン)から、下流(稼働・アフターケア)まで全工程にわたってすべて対応する、極めてめずらしい鉄工所なのです。』
『変化が激しく、不確実性が高い環境下においては、非定型な仕事も多くなり、なにより仕事そのものがだまっていても降ってくるわけではなく、自分なりに探しに行く必要が出てくるのです。
VUCAの時代は「何か良いシステムを提案して」というように仕事を曖昧な形で依頼することも増えてきます。
これがVUCAの時代において問題発見が必要になってくる理由です。』(問題発見力を鍛える/講談社現代新書)より
まさに、ヒルトップの経営は、VUCAの時代において最強の経営手法といえる。
自ら問いを立てることができる会社だ。
しかし、いくら強烈に願っていても、下請け、孫請けから脱却できる会社は少ない。
それを、なかなか行動に移せないからだ。
いま、あらゆる業種業態が生き残るため…
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