人の心に灯をともす 4107 心中常に喜神を含む

【心中常に喜神を含む】4107



藤尾秀昭氏の心に響く言葉より…


楽其生 保其寿。(忠経より)


その生を楽しみその寿を保つ…新井正明(住友生命保険・元社長・会長)氏はこの言葉を好まれ、よく口にされた。

その生を楽しむとは自分の生業(なりわい)を楽しむということ。

仕事を楽しむことができれば、自ずとその寿を保って長生きができる。

新井氏は言葉の意味をそう説明されていた。


事実、氏はこの言葉通りの人生を生きられた。

26歳の時、ノモンハン事変で負傷、右足切断、隻脚(せっきゃく)の身となられた。

「人より遅く来て早く帰ってよろしい」という上司の言葉を有難く受け止めながらも、人より早く出社し、人よりも遅くまで働き、社長、会長としてすぐれたリーダーシップを発揮、社を業界上位に躍進させ、92歳までその寿を保たれた。


その新井氏が生涯の心訓とされたのが安岡正篤師の「健康の三原則」である。

曰く、


一、心中常に喜神を含む

…どんなことにあっても心の奥深いところにいつも喜ぶ心を持つ


二、心中絶えず感謝の念を含む


三、常に陰徳を志す


「その生を楽しみその寿を保つ」ために忘れてはならない三原則といえよう。

この六文字について、新井氏には思い出がある。

氏が静岡支社長の時期、安岡師に二人の弟子がいた。

一人は農業をしている人。

日本は敗戦で混乱状態になったが、こういう時だからこそ安岡師の教えを広めなければと、自分も学び、人にも熱心に説いて回った。

もう一人は金物屋さん。

師の教えを学ぶことは熱心だが、人に説くようなことはせず、一所懸命家業に打ち込んでいた。

これに対し、「商売ばかりやっていて、けしからんと」と農業の人は腹を立てた。

人に師の教えを説くべきだ、というわけである。


安岡師は言った。

「金物屋さんはやはり金物屋さんとして立派に商売をやらなければならない。

だから、金物屋の主人として一所懸命にやるのは正しいことだ。

その上で道を求めるということが大切だ」

活学を説き続けた人の明快な言である。


古人のあとを求めず古人の求めたるところを求める…松尾芭蕉の愛した南山大師の言葉である。

私たちもまた先人の求めたるところを求めて人生を生きたいものである。


ドイツの大文豪ゲーテもまた、人生を楽しみ、82歳の寿を保った人である。

そのゲーテが「処世のおきて」と題し、「気持ちのよい生活を作ろうと思うなら」という前置きをつけて遺した言葉を記す。


済んだことをくよくよせぬこと

滅多なことに腹を立てぬこと

いつも現在を楽しむこと

とりわけ人を憎まぬこと

未来を神にまかせること


洋の東西を超えて、人生の達人の言葉はシンプルで、深い。


『小さな修養論』致知出版社
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安岡正篤師は「喜神を含む」についてこう解説している。

『喜神の神とは神社仏閣に祀ってある神ではなく、精神の神(しん)、つまり心の最も奥深い部分を指す言葉です。

従って喜神を含むとは、どういう立場に立たされようと、それに心を乱されることなく、心の奥深い部分にいつも喜びの気持ちを抱いてことに当たれば、どんな運勢でも開けないものはなく、上昇気流に乗ったように開けていくという意味です。

これこそは人生の極意であり、特に人の上に立つ者が身につけておかなければならない姿勢だと思います」

喜神を含んでものごとが実行できるためには、どんなことであろうとも、甘んじて受けることが大切だ。

甘んじて受けることができるためには、自分の人生は天が導いている、従ってどういうことが起きようとも、それはよいことの兆しであって悪いことは何もないという強い確信が必要である。

天へのこの深い信頼があるとき、私たちは目先のことに動揺することなく、一見トラブルにしか見えないことも甘んじて受け入れ、誠心誠意改善に努力することができる。

人を非難することなく、清々(すがすが)しい気持ちで、喜々として取り組める。』(下坐に生きる /致知出版社)



「喜べば、喜びごとが喜んで、喜び連れて、喜びに来る」

という言葉がある。


「喜ぶ」という言葉を「悲しむ」「憎しむ」「楽しむ」「怒る」に置き換えることもできる。

「悲しめば、悲しみごとが悲しんで、悲しみ連れて、悲しみに来る」ということだ。


「心中常に喜神を含む」という生き方を目指したい。






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