人の心に灯をともす 4112 愛語は人の魂に刻み込まれる

【愛語は人の魂に刻み込まれる】4112



大叢山福厳寺住職、大愚元勝氏の心に響く言葉より…


《本人のいないところで人を褒めると、相手の魂のレベルで喜ばせることができる》


「相手を引き寄せる(人に動いてもらう)には、自分が魅力的な存在になること」が重要です。

曹洞宗の開祖・道元禅師は、「正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)」の中で、「四摂法(ししょうぼう)」と呼ばれる「相手を引き寄せる4つの智慧」について、書き残しています。

4つの智慧とは、「布施」「愛語」「利行(りぎょう)」「同事(どうじ)」です。


●布施…独り占めしないで、他の人に自分の財力、能力、労力を惜しみなく分け与えること

●愛語…優しい言葉、慈愛に満ちた言葉、愛情のこもった言葉をかけること

●利行…見返りを求めないで、他の人の利益のために尽力すること

●同事…自分を捨てて、相手と同じ心・境遇になること。相手が喜んだら同じように喜び、誰かが悲しんだら同じように悲しむこと


「四摂法」の4つの智慧は、いずれも、より良い「仲間づくり」の秘訣を説いたものです。

4つの中で、とくに愛語の実践が、人間関係を良い方向に変えると私は考えています。

愛語は、「赤ちゃんを思う母親のように、慈しみを持って言葉をかけなさい」という教えですが、もうひとつ興味深いことに、その使用方法までが具体的に示してあります。

それは、

「その場にいない人を褒める」

「その人がいないときに、その人の魅力をどんどん話す」

「本人のいないところで、人を褒める」

ことです。


会社員のAさんは、部下との関係に悩んでいました。

部下が、「なかなか言うことを聞いてくれない(上司の言うとおりに動いてくれない)」というのです。

ですが、言うことを聞かなかったのは、部下に忠誠心がなかったからではありません。

「部下に厳しくする」のが、Aさんの指導方法だったからです。

Aさんは愛語の実践を怠り、日常的に部下の欠点を見つけ、それを批判していました。


その後、愛語の教えを学んだAさんは、「部署内のお荷物」と見なされていた部下のBさんに対し、愛語を実践するようになりました。

Bさんの欠点を批判するのではなく、Bさんの持ち味をポジティブに評価し、「本人のいないところ」で、褒めるように心がけたのです。

「上司が、自分のことを『間接的』に褒めてくれている」ことを知ったBさんは、以前のように、失敗にめげたり、肩を落とすことがなくなりました。

営業成績も少しずつ上向きになったそうです。

Aさんの愛語がBさんを励まし、そして、Bさんの変化が部署全体を明るく変えたのです。


道元禅師は、「言葉の力」をとても大切にしていました。

「正法眼蔵」には、

「面と向かって愛語を聞くと、喜びが顔にあらわれ、心は楽しくなる。面と向かわず、人づてに愛語を聞くと、肝に銘じ魂に深く刻み込まれるような思いをする」とあります。


『苦しみの手放し方』ダイヤモンド社
https://amzn.to/3m3x2hd







私の母は40年間、お寺のお庫裏(くり・住職の妻)として、そしてお寺に併設してある幼稚園の副園長を務めました。

母は神奈川県の牧場に育ち、書家を志して進学した大学で父と出会い、お寺へ嫁いだ人です。

家族も友人もいない、まったく慣れない環境に跳び込んでみたものの、書を書くこと以外、何もできないと感じていた母は、せめて「愛語」を使うように心がけていたそうです。


福厳寺の檀家の中に、頻繁にお寺へやってくるひとりのお婆ちゃんがいました。

お婆ちゃんの口癖は、「もう生きとってもしょうがない。はよ死にたい」。


そして、世間話のついでに「お嫁さんへの不満や悪口」を延々と話して帰っていくのでした。

当時、母はまだ若く、お嫁さんの年齢とさほど変わらなかったので、お婆ちゃんの愚痴を聞きながら、「我が身のことを言われているようで辛かった」と言います。

ある年の春のこと。

そのお婆ちゃんの紹介で、幼稚園にお孫さん(お嫁さんの子ども)が入園してきました。

母がお嫁さんと話をしたところ、おとなしく、不器用なところもある一方で、「とても素直で、かわいらしいお嫁さんだ」と感じたといいます。

母が、「お義母さんがよくお寺にいらっしゃる」と伝えると、お嫁さんは「私は世間知らずで気が利かないから恥ずかしい。けれでもそんな私にも義母はよくしてくれる」と語ったそうです。


その日以降、母や、そのお婆ちゃんがお寺に来るたび、「お嫁さんがお婆ちゃんに感謝している」ことに加え、お孫さんの良いところを褒めて聞かせたそうです。

お婆ちゃんは最初、「まー、あれがそんなこと言っとったかね」と驚いた様子でしたが、次第にお嫁さんの悪口を言わなくなっていったといいます。

そして、ついに「お嫁さんに良くしてもらったこと」を、嬉しそうに報告してくれるまでになったそうです。

母は40年の経験を振り返りながら、「愛語」の力を確信して言っていました。

「人は3人集まると誰かしらの悪いことを言う。けれども、ほんのちょっとした愛語がきっかけで、そうした愚痴や陰口がやんでいくものなの」と。

回り回って本人の耳に入った愛語は、「その人の魂まで届く」ほど、大きな力を持っています。

《人間関係を円滑にするには、愛語を実践する。間接的に人を褒める。そうすれば相手からも、優しい言葉、慈愛に満ちた言葉、愛情のこもった言葉をかけてもらえるようになるはずです。》


「愛語よく回天の力あり」

道元禅師の言葉だ。


愛語は、困難な状況や難しい局面を、ひっくり返す力を持っている、ということ。

反対に、ネガティブな言葉、ののしりや悪意の言葉には、一瞬にして状況を悪化させる力があるということだ。

そして、愛語の中でも最強なのが、本人のいないところで人をほめる「陰ほめ」。

その逆が、「陰口」。


「愛語は人の魂に刻み込まれる」

愛語の実践を重ねたい。






■メルマガの登録と解除はこちらから http://hitonokokoro.com/

■「人の心に灯をともす」のfacebookページです♪http://www.facebook.com/hitonokokoro

■【人の心に灯をともす】のブログはこちらhttp://ameblo.jp/hiroo117/

■Twitterはこちらからhttps://twitter.com/hiroo117