人の心に灯をともす 4519 中抜き現象

【中抜き現象】4519



フィリップ・コトラー氏の心に響く言葉より…


デジタル革命は、小売業界の数十年にわたる前提を変えた。

近年、世界中であまりにも多くの店舗がシャッターを下ろしており、“黙示録”と言い出した人までいる。

ざっと見渡した限りでは、伝統的小売業者は危機的状況にあると言えそうだし、eコマース(EC)が日々成長していることからも、デジタル革命こそがリアル店舗衰退の主要因であると指摘したくなるかもしれない。


しかし、時を同じくして、アマゾンやアリババといった電子取引の巨人がリアル店舗の開設を決めている。

直営で新しいフォーマット…アマゾン・ゴーなどを「不可視であれ」の法則で掘り下げる…を実験している場合もあれば、既存のチェーンを買収している場合もある。

そしてグーグルが、近い将来、旗艦店開設を具体的に検討するようだ。

スマートフォンのピクセル、仮想現実(VR)のデイドリーム用のヘッドセット、サーモスタットのネスト、バーチャル・アシスタントのグーグルホームを含め、同社が提供する最高のオファリングにスポットを当てる店舗である。

そうなってくると、問題はより複雑だ。

リアル店舗の運営に関わる非効率性をもたないピュア・デジタル・プレーヤーが、どうして危機的状況と見なされている市場に参入し、“ピュア”であることを放棄しなくてはならないのか。

答えは、小売業界がどうしようもなく衰退しているとする説の脆弱さにある。

現に、デジタルに優しい推計でも、小売市場におけるデジタル取引は全体の20パーセントに満たない。

近年、オンライン購入が急激に伸びていることに疑いの余地はないが、黙示録を喚起してまで、物理的小売が死に瀕していると宣告するのは、控えめに言っても性急だと我々は判断している。


むしろ、デジタル・ツールを使う人が増え続けていることで誘発された変化に照らし、他の業界同様、小売りの伝統的モデルを見直す必要がある。

消費者の購買プロセスは、従来、直線的に表されていた。

ニーズの発生またはウォンツの表出がその後のプロセスを促す刺激であり、いわゆる認知(気付くまたは知る)が生まれ、それが情動(親しみまたは関心)と検討(考慮または欲求)に、その後、購入(購買行動)となる。

さらに、うまくいけば再購入や肯定的なクチコミへと進む。

しかし、デジタルの“タッチポイント”(ブランドと顧客との接点)の増殖に伴い、カスタマー・ジャーニーは決定的にその形を変えた。

連続する段階ではなく、多くの瞬間が点在する網目のようになってきている。

消費者のプロフィールはもちろん、財またはサービスの種類ごとに異なるが、さまざまな瞬間が概(おおむ)ね決定的に重要なものとなっている。


リテール機能のモデルを改めて読み解くには、デジタル革命によって生じた変化を考慮しなくてはならない。

より細分化した購買プロセスのなかでリアル店舗が果たす役割を根本的に再定義し、必要ならば店舗の存在意義に関しても再検討すべきである。

かつての携帯電話とは異なるスマートフォンの特徴は、インターネットへの接続性である。

ここ数十年で、世界の約30億人が生活のなかでスマートフォンを使うようになった。

また、世界でこれとほぼ同じ人数が、少なくとも一つのソーシャル・ネットワークに登録している。

この2点があいまって、われわれに色鮮やかな光景を見せてくれる。

世界人口のほぼ半数がオンラインで、誰もがいつでもコンタクトできる状態にあるのだ。

そして、人々は他人とも企業ともリアルタイムで交流できる。

コンタクト性とリアルタイム性という2つの要素だけで、ゲームのルールを書き変えるに十分である。


数年前まで、企業と対話をする方法は、手紙を書くか顧客サービスに電話するかに限られていた。

だが、現在は対話がリアルタイムで起こる。

しかも、他のユーザー、競合、メディア、各種公的機関が、事実上、発言権をもつオーディエンスとして対話が発生する。

市場は横に広がり包括的でソーシャルになっている。

情報は驚異的なスピードで駆け巡り、少し前まではマーケティング・キャンペーンの“受け手”と定義されていた人々が、現在はキャンペーンの共同企画者となっている。

それだけではない。

購入者が簡単に自分の意見を表明できるので、製品・サービス自体が共同でつくられ、共同で具現化され、共同でデザインされているケースが多々ある。
こうした進化は、企業とブランドに新しい責務を課す。


デジタルトランスフォーメーションに起因する主要な二つの現象は民主化(コスト低下と技術使用の簡易化によって、後半な層の人々がコンテンツ、情報、財・サービスにアクセスでき、それらの生成までできるようになっていること)と中抜き現象(流通チェーンにおける伝統的仲介を迂回し、コンテンツや製品が見込み購入者に直接到達すること)である。

加えて、ソーシャル・メディアを通じて消費者と対話の機会を設けたり、オンライン取引を完結させたりすることができる。

以上のような特徴によって、B2B(企業対企業)とB2C(企業対消費者)の区別などは、むしろ古くなっている。

伝統的にB2Bとして区分されていた多くの事業者が、最終顧客とコンタクトできるからである。

製品またはサービスの性質ゆえ、今も第三者(たとえば大型のリアル店舗やマルチブランドの大型eコマースサイト)の仲介を必要としているため、コンタクトがマーケティング・コミュニケーションのレベル“だけ”で生じるケースがある。

これに購買の可能性が加わる場合、すなわち仲介への依存から脱却すると、先ほどの区別は、H2Hすなわち人間対人間というもっと広い概念のなかに溶け込んでしまう。


これからは、オンラインの経験とオフラインの経験が完全に融合した時代となるだろう。


『コトラーのリテール4.0』朝日新聞出版
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本書の解説にはこんなことが書いてあった。

『リテール4.0では、リテールの守備範囲を単に広く捉えなければならないという解釈もできる。

しかし、今日のデジタル化が進む社会では、製造業と小売業といった伝統的な切り分けが意味を持たなくなっており、デジタル・プラットフォームでの売買の発生が増えるとともに、リアル店舗の機能が大きく変化しているという事実を理解しなければならなくなっている。』


昨今は、インターネットが発達した結果、様々なところで中抜き現象がみられる。

代理店や問屋、卸、等々の中間にある業者がなくなっていくということだ。

たとえば、今、大流行のclubhouseなどもその一例で、FMやラジオ局を抜かし、個人が直接、別の個人にメッセージを伝えることができるようになった。

また、生産者が小売り業者を抜かし、直に販売するケースもある。

ピーナツ栽培農家がそれをピーナツバターに加工して、ネットで売るというような場合だ。


しかし、だからと言ってすべての店舗がアマゾンに駆逐されて、小売業がなくなるということではない。

D2C(Direct to Consumer)という製造業者が直接消費者にオンラインで売るが、店舗も構えるところが増えている。

たとえば、オーダーのスーツの店は、店舗では採寸だけで、できあがったらネットで配送する。

小売業も時代の変化にあわせて進化している。


時代の大きな流れを見極めたい。





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