人の心に灯をともす 2861 知らしめること

【知らしめること】2861


伊那食品工業会長、塚越寛氏


モラールアップ経営とは、たんなるテクニックで成りたつものではありません。

いわば、社長の考え方や生きざまそのものです。

ここで肝心なのは、社長の考え方や生きざまを、どうやったら社員すべてに浸透させるかということです。

一人で威張っているだけでは、社員たちに理解させ、行動につなげることはできません。

そこで、「知らしめること」の重要さが出てきます。


たとえば、会社を訪れたお客様から、職場の環境が「きれいだね」、「美しいわね」というお褒めのことばをいただいた場合、一部の関係者だけが喜ぶのではなく、全員にこの事実が伝わる仕組みができていることが、大切なのです。

社員旅行に出かけたときに、当社の社員がバスのなかにピーナツ一つ落とさないので、バスガイドさんから「これだけ騒いで、これだけバスをきれいに使う団体さんはほかにない」と褒められる、といったことも同様です。

褒められたことを、全員が知ることが大切だと思います。

こうしたことの積みかさねが、社員自身のなかに誇りを育てていきます。

社員一人ひとりの日々の言動が向上し洗練されていくと、幸福感が高まり、やがて結果的に業績にも反映されていくように思います。


私は、経営とは「知らしめること」であると思います。

経営者は、話し上手、伝え上手でなければなりません。

伝えることがうまくいかないと、経営はうまくいきません。

経営とは伝えることであると言ってもよいでしょう。

どんなに高い志も、話が下手では伝わりません。


古今東西、人間は、伝えることにどれほどのエネルギーを費やしてきたことでしょう。

企業も行政も、「伝える」ために大きな費用を使い、情報産業は巨大なものに育っています。

会社として、お客様に向けては多大な費用と労力を使って伝えていますが、それと比較して会社の内部に伝えることに重きをおいている経営者は少ないのではないでしょうか。


トップの理念や考え、指示やその目的を社員に伝え知らせることは、モラールアップの最大の手段であると思います。

組織のトップは、組織を構成する人たちに徹底して自分の考えを知らせる努力をしたいものです。


情報を、バラバラでなく系統立てて伝え、それを必要とする社員が等しく共有するということをきちんとやっていれば、おのずから社員の行動様式はまとまり、モラールも向上していきます。

ガラス張りで隠しごとをしないことも、情報伝達を円滑に行うためには大事だと思います。


『新訂 いい会社をつくりましょう』文屋






トヨタの元社長、張富士夫氏の素晴らしい言葉がある。

『私は「人づくり」のキーワードは、「価値観の伝承」だと思います。

つまり「ものの見方」を伝えること。

「これがいいこと」「これが大切」ということを、「現地現物」で後輩に理解させ、伝えていくこと』


どんなに高邁(こうまい)な夢や理念があろうと、それが誰にも伝わらなかったら、それは無いのと一緒。

また、素晴らしいアイデア、すぐれた商品、抜きん出た発想、なども同じこと。


価値観とは、何(どこ)に価値があるかという判断をするときの、根本となる考え方や見方のこと。

だから、価値観を伝えるということは、考え方や見方を伝えること。


「知らしめること」に全力で取り組みたい。






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