人の心に灯をともす 3059 小さな歌声

【小さな歌声】3059


ジャック・キャンフィールド氏の心に響く言葉より…


メアリーは5歳の患者。

台車に載せた彼女を、MRI(磁気共鳴装置)の検査室に運びながら、この子はいまどんな思いでいるのだろうと思った。

メアリーは卒中で倒れて半身不随となり、脳腫瘍の治療のために病院生活を送ってきた。

そのうえ、最近父親を、続いて母親を亡くし、帰る家もなくなってしまった。

そんなメアリーがこの検査をいやがるのではないかと、私たち医療スタッフは気がかりだった。


MRIの装置の中に、メアリーは文句も言わず、素直に入れられた。

検査が始まった。

初めの5分間、患者は完全に静止していなくてはならない。

これは、誰にとってもかなり苦痛だ。

とりわけ不幸の連続だった5歳の幼い少女にとっては。


撮らなくてはならないのは、頭脳の画像だった。

だから、どんなにわずかでも、喋ったりして顔が動くと画像がブレてします。

2分たった。

と、モニターにメアリーの口が動いているのが映った。

何かモゴモゴと喋っているのも聞こえてくる。

スタッフは検査を中止し、メアリーに優しく注意した。


「メアリー、いい子だから、お喋りやめましょうね」

メアリーは微笑むと、二度とお喋りしないと約束してくれた。

スタッフはふたたび装置を作動させ、初めからやり直した。

ところが、また顔が動いている。

声もかすかに聞こえる。

なにを言っているのかはわからないが、みんなイライラしてきた。

ほかの患者も待っている。

メアリーのために、予定をやりくりして検査しているのだ。


私たちは検査室に入っていき、メアリーを装置から出した。

メアリーはいつものひしゃげたような笑顔で私たちを観たが、いっこうに悪びれた様子がない。

検査技師はやや不機嫌になって言った。


「メアリー、またお喋りしていたね。お喋りすると画像がブレちゃうんだよ」

メアリーは笑顔のまま、答えた。

「お喋りなんかしてないわ。歌ってたの。お喋りしちゃダメっていうから」


私たちはあっけにとられた。

「それ、どういうこと?」スタッフの一人が尋ねた。

「“主われを愛す”」蚊の泣くような声だった。

「幸せなときはいつもこの歌を歌うの」


検査室の誰もが言葉を失った。

幸せ?

まさか?

どうしてこの幼い少女が幸せだなって言うのだろう?

検査技師と私は、思わず涙ぐんでしまい、涙を見せまいとしていったん部屋を出た。


それ以来、私は気持ちが滅入ったり、落ち込んだりするたび、メアリーのことを思い浮かべるようになった。

メアリーのことを思えば、謙虚になれる。

そして勇気が湧いてくる。

逆境にあっても幸せを感じ取る心こそ、神からの贈り物なのだ。

進んで受け取る気持ちさえあれば、誰にだって与えられる贈り物なのだから。


『こころのチキンスープ12 みんなが誰かを愛してる』ダイヤモンド社




石川洋氏に「自戒」という詩がある。


つらいことが多いのは 感謝を知らないからだ。

苦しいことが多いのは 自分に甘えがあるからだ。

悲しいことが多いのは  自分のことしか分らないからだ。

心配する事が多いのは 今をけんめいに生きていないからだ。

行きづまりが多いのは 自分が裸になれないからだ。



まわりの誰がみても不幸せだと思える状況で、その中から幸せを見つけ出せる人がいる。

そんな人に出会うと…

謙虚になれる。

自分に甘えがあることに気づかされる。

自分勝手なことに気づかされる。

今ここ、に生きなければと思う。

自分をさらけ出せないことに気づかされる。


毎日を、謙虚に、感謝の気持ちで生きてゆきたい。







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