人の心に灯をともす 3445 人生は、ただ一場の夢

【人生は、ただ一場の夢】3445



無能唱元氏の心に響く言葉より…


三十歳の頃、野尻湖を訪れたときのことです。

夏の夕暮れ、私は東岸の道を散歩しておりました。

すると、近くの林の中から、林間学校の生徒たちのものらしい合唱の歌声が聞こえてきました。

それは有名な輪唱曲「ロウ ロウ ロウ ユア ボート」でした。


私は立ち止まり、みずうみの対岸を見つめながら、しばらくその歌声に聞き入りました。

この頃、私は英会話を学んでおりましたので、そのとき、それまでは気にもかけていなかった、この歌の内容を何気なく訳しながら聞いていたのです。


ロウ ロウ ロウ ユア ボート

ジェントリ ダウン ザ ストリーム

メルリー メルリー メルリー メルリー


漕(こ)げよ 漕げよ 漕げよ 小舟を

おだやかに 流れにそって くだれ

楽しげに 楽しげに 楽しげに 楽しげに


そして、これに続く、この歌の終章を聞き、その意味を初めて知ったとき、私は愕然(がくぜん)としたのです。それは、

ライフ イズ バット ア ドリーム

人生は ただ一場の 夢


という一行でした。

「なんということだ!」と私は思わず、うめきました。

ただの単純な童謡だと思っていた歌詞の中に、古典的日本文学にただよう仏教的諦観(ていかん)にも共通する表現があろうとは!


「無常迅速(むじょうじんそく)」「一期一会」などと、言い表されている、人生の哀感が、この童謡の中の、しかもたった一行に、かくも突然に、かくも衝撃的に言い表されていようとは!

私はしばし呆然(ぼうぜん)として、みずうみを渡ってゆくこの輪唱の響きを聞いていたのでした。


人生における幸せとは、この幻とも思えるひとときを、いかにイキイキ、ワクワク過ごせるかにかかっていると言っていいでしょう。

みずうみのほとりで、そう気がついたとき、それは私のサトリでした。


『小さなサトリ』河出書房新社




城山三郎氏の小説にこんな一節がある。

『一期(いちご)の盛衰(せいすい)、一杯の酒。

一代の英雄の興亡盛衰の重さも、一杯の酒のうまさに叶わぬ、というのね。

ついでにいえば、わが人生、酔生夢死という終わり方をしたいわ』(本当に生きた日)より


室町時代の「閑吟集」にも、こんな言葉がある。

「何しようぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂え」

いったい何をしてるんだ、まじめくさって。

人生なんて一瞬の夢よ。

面白おかしくただ狂え、と。


「人生は、ただ一場の夢」

人生を、面白がって、楽しく、暮らしたい。








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