人の心に灯をともす 4759 日本車は生き残れるか

【日本車は生き残れるか】4759



川端由美氏の心に響く言葉より…


GDPの1割を占める巨大産業 「日本の自動車業界は崩壊するのではないか」 そのような言説が、いつのころからか目立つようになった。

いうまでもなく、自動車産業は重工業・電気電子と並んで戦後の経済復興の立役者であり、重工業や家電メーカーが衰退しつつある現在は、日本経済を支える大黒柱的な存在である。

日本自動車工業会 (自工会)の統計によれば、自動車製造業の製造品出荷額は62兆3040億円とGDPの約1割を占める。

全製造業の製造品出荷額に占める自動車製造業の 割合は18.8 %、自動車関連産業の就業人口は542万人に達する (2018年時点)。

日本のGDPの約1割を占める巨大産業の崩壊など想像もつかない。

このコロナ禍の時代にあって、トヨタ自動車など一部のメーカーは、むしろ販売台数を伸ばしており、「自動車業界の危機など大嘘だ」と断ずる業界関係者や専門家も多い。

それでは本当のところはどうなのか。


日本の自動車産業は崩壊しない。

ただし、戦い方のルールは大きく変化する。

そして、 新しいルールに適応できた企業だけが生き残ることができる。

これが本当の「解」である。


それではどのようにルールが変更されるのか。

キーワードは、ここ数年で世界中に広がった「CASE」だ。

コネクテッド (connected) のC、自動化 (autonomous) のA、シェアリング(shared) /サービス(service)のS、電動化 (electric)のEのそれぞれの頭文字をとったもので、2016年に開催されたパリ・モータ ーショーでダイムラー会長(当時)のディーター・ツェッチェが使った言葉として知られる(世界的にはACES [autonomous, connected, electric and shared mobility]という言葉の方が一般的だ が、本書では、日本で浸透した「CASE」を使用する)。

日本の自動車業界では往々にしてE(電動化)やA(自動化)の開発が先行して話題になりがちだが、「C」「A」「S」「E」を並列で眺めていると本質を見誤る恐れがある。

CASEの最大のポイントは、Cつまりコネクテッドによって自動車がIoT(Internet of Things = モノのインターネット)の枠組みの中に組み込まれていくという点なのである。


自動車というモノがインターネットにつながると、自動車を取り巻く世界は大きく変わることになる。

自動車産業の本当の大変化はそこから始まる。

もともとはOA機器だったパソコンがインターネットにつながった結果、GAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)に代表される無数のIT企業が生まれた。

電話がネットとつながったスマートフォンの登場によって莫大な数のアプリケーションやサービス提供者が生まれた。

これと同じ文脈で今の自動車業界はとらえられるべきなのだ。


自動車がインターネットにつながる。

いまの車に起こっているととはEの電動化とAの自動化であり、これは個々の車載の技術だ。

そして、これから起きるのは、パソコンやスマホのように、「ネットにつながった車」から生まれるまったく新しい、そして膨大な数のサービス(モビリティサービス)であり、その一つがウーバーのようなライドヘイリング(配車サービス)である。

この文脈でみれば、なぜGAFAのような IT業界の巨人たちが自動車産業にこぞって進出しようとしているかがよくわかる。

この流れの中で、自動車はIoTの「oT」、つまり「ネットにつながったモノ」になる。

その後、巨大なモビリティサービスの市場が次々と誕生していく。

まずはこの点を強調しておきたい。


このCASEの流れは不可避である。

それではその結果、何が起こるのか。

いろいろな答えがあるだろうが、最も大事なことは、次の点ではないかと私は考える。


それは、従来の「自分の会社の技術を使って次世代の事業を考える」という時代から、「社会的な課題から需要のある事業とは何かを考える」時代に移っていく――点だ。

2021年1月、通常国会の施政方針演説で、菅義偉首相が「(国内販売車の電動化につい て)2035年までに新車の販売は電動車100%を実現する」と表明し、自動車業界に 激震が走った。

菅首相はその前年、2020年の10月にも「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言したが、その具体的な策として自動車産業に直接言及した形だ。

気候変動の抑制に多国間で取り組むことを謳った2015年の パリ協定採択以来、欧米や中国ではカーボンニュートラル(炭素の中立 = 地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を抑え、植物の吸収量とあわせてゼロにする)に熱心で、地域や国を挙げて自動車の電動化や代替燃料の利活用に取り組み、自動車産業の側も数年前から対応してきた。カーボンニュートラル、化石燃料の枯渇といった「社会的な課題」から需要のある仕事を考え、先手を打っていたのである。

つまり、いずれはその流れが避けられないことは明らかだった。

それだけではない。

人口減少による公共交通のドライバー不足を解消するための自動運転であったり、個人所有の限界から、シェアリングという新しい業態が生まれたりと、昨今の自動車産業をめぐる動きは、いずれも社会的な課題が起点となっている。

だからこそ、欧米あるいは中国の自動車産業は、自社の技術にこだわらず、ライバルとも手を組んだり、次々と積極的な買収を行ったりしてきたのだ。


翻って、日本ではどうだったろう。

日本の自動車産業は、「モノづくり」という意味では今でも世界トップレベルの技術を持っている。

だが、自社の技術力、自社のモノづくりにこだわり続けたあまり、「社会的な課題」から事業を考えるという視点がやや足りなかったのではないだろうか。

だからこそ、菅首相の“突然”の表明に慌てているのではないだろうか。

モノづくりの思考回路から抜け出せない経営陣がいる企業では、「電動化の技術開発を急げ!」と檄が飛び、そのために技術者たちが夜を徹して開発するなどという時代錯誤の企業経営につながりかねない。

必要なのは、電動化に関する自社の優れた技術よりも、社会的な課題に気づかずに(あるいは気づきながらも自社の立場に慢心して)本当に必要な開発を怠り続けた経営陣の反省だろう(実は、電動車に必要な個々の技術は日本の企業が得意とする分野でもある)。


『日本車は生き残れるか』(桑島浩彰&川端由美)講談社現代新書
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本書の巻末にこんな言葉があった。


『これは日本の製造業全般に言えることだが、「形のないもの」に対価を支払う決断が遅れがち――という悪癖がある。

形があろうがあるまいが、その導入によってもたらされる成果が重要なはずだが、サービスやソフトは中古で転売ができないから購入に二の足を踏むといった前近代的な思考が、いまだに一部の日本企業には残っている。

今後さらにサービスや情報・データ・ソフトウェアへの需要、ビジネスモデルの機会が 増えていくなかでは、「形のないもの」にお金を払えない、払わない企業は存続が難しくなっていくはずだ。

そして、それは自動車産業も例外ではない。

そもそも、サービスや情報・データ・ソフトウェアに対し、的確な対価を払うことができなければ、GAFAに代表されるようなネットでつながる産業と対等にビジネスを行っていくことが困難になる。

情報収集やネットワークの構築にもお金は必要だし、自社の事業を支援・拡大してくれるサービス事業者を支援する必要もある。

デジタルの時代、コネクテッドの時代には、データをオープンに管理し、他社との連携を行うことでデータを共有し、適宜フィードバックを行うことで、よりユーザーが使いやすいプラットフォームに改良し、エコシステム全体の価値を高めていく――というビジネ スモデルが一般化する。

自動車産業にとっては、その一つの形態がコネクテッドになった時代のモビリティサービスなのだ。

「形のないもの」への偏見を捨てなければ、このエコシステムの中で激化する生存競争に はついていけなくなるだろう。』


すべてがネットワークでつながるコネクテッドの時代、データという情報こそが貴重な経営資源となる。

データこそが宝の山なのだ。


トヨタは、「現代はあらゆるモノやサービスがつながる時代」だという。

そのため、静岡県裾野市で「コネクティッド・シティ」の実証実験を始めることとなった。

その街を「Woven City」(ウーブン・シティ)という。


そこでは、CASE、パーソナルモビリティ、自動運転、モビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)、シェアリング、ロボット、スマートホーム技術、人工知能(AI)技術等々の研究をすすめる。

すべての情報がつながり、データとして蓄積されていく。

情報のつながりの根幹をなすマイナンバーでさえ活用できないデジタル後進国日本では、現在のところ、ウーブン・シティのようなかたちでしか実験ができない。


この自動車産業界への警鐘は、他の日本の産業にも同じことが言える。

すなわち、「日本車は生き残れるのか」は、「日本の企業は生き残れるのか」とそっくり言い換えることができる。


生き残れる企業になるため…

デジタルとコネクティッドの学びを深めたい。






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