人の心に灯をともす 5581 多所懸命

【多所懸命】5581



精神科医、斎藤茂太氏の心に響く言葉より…


《いじわるばあさん、がんこじいさんになる人》


「一所懸命」とは領主から授かった土地を、命を懸けて守ること...これが語源となって生まれたのだそうだ。

そして後に「ひとつのことに脇目もふらず、真剣に取り組むこと」という意味になった。


今の世でいえば、「趣味ですって? 楽しみですって? そんなものありませんよ。仕事が私の趣味みたいなものですから」 と仕事ひとすじにかける、仕事人間の生き方のようにも思える。

それはそれで立派だが、これだと、どうしても毎日の生活が「行ってくる」「いま帰った」「メシ」「風呂」「寝る」の、繰り返しになりやすい。

こういう単調な生活は心の老化をはやめる。

後々、自分を、せっかち老人、がんこじいさん、いじわるばあさんにしてしまう。


そこで「ゆっくり生きる」ために私は「多所懸命」をおすすめしたい。

仕事ばかりでなく、いくつもの顔を持って、多方面の分野でがんばれる人になるのだ。

多方面の分野に顔を突っ込むといいのは、いろいろな人と知り合えることである。


いくつになっても、まだ見ぬ人との出会いは楽しいものである。

自分の知らなかった意外な話が聞け、好奇心が触発され、人間の幅も広がっていく。

目からウロコが落ちる。

大げさにいえば「人生の喜び」をもたらしてくれる。


一日の時間割も、できるだけ「多所」にする。

机に座って、ひとつの仕事に懸命になるのではなく、あっちの仕事を一時間やったら、こっちの仕事に切りかえて、午後はもうひとつ別の仕事の段取りをやって・・・・・・と、ひとつのことに凝り固まらない。

私も診察日は一日中病院の中で患者さんと対峙することになるが、休診日には、いろんなことをやるよう心がけてきた。

気分転換もできるし、原稿も書きすすむ。

せっせと「一所懸命」より「ゆっくり懸命」をすすめる。



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立命館アジア太平洋大学学長の出口治朗氏は、こう語る。(朝日新聞Reライフ・net)より


「日本の企業に勤める人たちが、長時間労働を前提に、『メシ・風呂・寝る』の生活を続けていては、日本の経済はもう持ちません。

製造業の工場モデルに過剰適応した日本の社会構造が問題なのです。」


「『メシ・風呂・寝る』の生活から、いろいろな人に会い、たくさん本を読み、面白いところへ行き、そこから学びを得る『人・本・旅』の生活に切り替えることだと思います。

旅というのは、観光旅行をしなさいということではありません。

近所で行列ができている評判のケーキ屋さんへ行って、実際に店を見て、ケーキを食べてみて、なぜ評判がいいのかを考える。

これも立派な旅です。」



まさに、「多所懸命」の生き方だ。

面白いところへ行くということの中には、さまざまなコミュニティに参加するという「旅」もある。

趣味のコミュニティや、まちおこし、読書や、飲食、スポーツなどのコミュニティだ。


そして、大事なのはそこになんらかの「学び」があることだ。

ただ楽しいだけのコミュニティは長く続かない。

なぜなら、人間にはいくつになっても、「学び続ける」「少しでも向上したい」という根源的な欲求があるからだ。

それが、「好奇心」であり「挑戦心」や「冒険心」という、「面白がる心」。


「多所懸命」で自らの学びを深めたい。





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