人の心に灯をともす 5602 漂えど沈まず

【漂えど沈まず】


開高健の心に響く言葉より…


《漂えど沈まず。》

(『花終る闇』新潮文庫 9頁)



小説家(開高健)が書き残した名言の中でも、とりわけ人気の高い名言中の名言だ。

小説家自身が書いているところによると、これはパリが“ルテチア”と呼ばれていた頃から掲げ続けている市のモットーで、パリ市の紋章にはセーヌ川に浮かぶ帆掛け舟のデザインと共にこの文言が書かれている。

原文はフランス語ではなくラテン語である。

"FLUCTUAT NEC MERGITUR"

(フルクトゥアット・ネック・メルギトゥール)



■「揺れても沈まず」と訳する人もいるが、小説家は これを「漂えど沈まず」と訳した。

ときには読点を 加えて「漂えど、沈まず」と表記したりもした。

「揺れても沈まず」に比べると言葉としての奥行きも深さも段違いである。



■《古い、古い時代からのパリのモットーなのだ。

言いえて妙だとは思わないか。

パリが誕生してから 五百年か六百年、あの街の歴史を見てごらんなさい。

風にうたれ波にもまれ、しかしその歴史は、「漂えど、沈まず」という一言に、見事に要約されているじゃないか。

男の本質、旅の本質はまさにこれなのだ。》

(『地球はグラスのふちを回る』 新潮文庫 291頁)



■《この言葉を核として、私は一作を書こうと以前から考えているんだけれども、いまだに書けないで、こうして君たちの“よろず相談”をやっている。

こういうことを早くやめなければ、私は溺れてしまう。

沈んでしまう。

漂うてはいるが、沈んでしまう。》

(「風に訊け」集英社 359頁) 『開高健名言辞典 漂えど沈まず』(滝田誠一郎)小学館 https://amzn.to/3AsJwvr






「漂(ただよ)えど沈まず」は、パリ市の紋章に書かれているラテン語だという。

長く続く歴史の中で、パリ市は戦争に翻弄され続けた。

ある時は他国に占領され、あるときはテロ攻撃にさらされた。

しかし、まさに「漂えど、沈まず」だ。



また、「悠々(ゆうゆう)として急げ」という言葉がある。

この「ゆっくり、いそげ」と同じラテン語だが、こちらの訳も深みがある。

不世出(ふせいしゅつ)のアマチュア・ゴルファーと言われた中部銀次郎や、作家の開高健が好んだ言葉だ。

二人とも、「悠々として急げ」という題名で本も出版している。


ゴルフはスピーディなプレイをしなければまわりが迷惑する。

だから急がなければならない。

が、しかし、悠々として、王者のごとく急ぐこと。

余韻の残る王者のゴルフをめざすなら。



人生は結局、どっちの道を行っても同じ、どの列に並んでも同じ、と肚をくくることだ。

間違ってもうろたえて、人数が少なそうな列に並び変える、などということはしてはならない。


人の世もまた、かくのごとし。

世の中が騒然とすればするほど…

異常事態になればなるほど…

「「悠々(ゆうゆう)として急げ」。


そして、どんなことがあろうと…

「漂えど、沈まず」。




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