人の心に灯をともす 5636 一燈を提げて暗夜を行く

【一燈を提げて暗夜を行く】5636



今西恭晟(たかあき)氏の心に響く言葉より…


《一燈(いっとう)を提(さ)げて暗夜(あんや)を行く。

暗夜を憂(うれ)うること勿(なか)れ。

只だ一燈を頼め。 》

(言志晩録・佐藤一斎)



幕末の儒者・佐藤一斎に『言志四録』という名著があります。

四録とは、『言志録』『言志後録』『言志晩録』『言志耄録(てつろく)』の総称であり、右の言葉は、『言志晩録』の一節。


「堤燈を一つ持って、暗い夜道を行く。

何も心配することはない。

この堤燈の明かりを頼りにすればよい」

との意味ですが、この一燈は何であるか。


人生を「暗い夜道」にたとえると、「堤燈」とは信念や志に当たります。

これらは羅針盤になります。

心の明かりであり、信念や志があるからこそ、夜道のような人生のなかで迷わずにすむのです。



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ブッダが亡くなろうとしているとき、弟子のアーナンダは「ブッダ亡きあと、私たちは何をよりどころとしていけばいいのでしょうか」と尋ねた。

するとブッダは「自灯明(じとうみょう) 法灯明」といった。

自灯明とは、自らをよりどころとしなさい。

自分を信じて、まどわされずに、しっかりと生きていきなさい、と。

法灯明とは、法をよりどころとしなさい。

いつまでも変わらない真理や仏法をよりどころとしなさい、と。



また、プロレスラーのアントニオ猪木氏が紹介して有名になった、詩人・清沢哲夫氏の「道」という詩がある。

■《道》

この道を行けば

どうなるものか

危ぶむなかれ

危ぶめば道はなし

踏み出せば

その一足が道となり

その一足が道となる

迷わずに行けよ

行けばわかるさ




一燈とは、自らをよりどころとする、ということだ。

たとえ、大きな「志」や「夢」はなかったとしても、コツコツと目の前のことを一所懸命やってきたことが、よりどころとなり、自信となる。

そして、先の見えない暗い夜道を、恐る恐るでも、自分を信じて一歩を踏み出さないかぎり、自分の道はできない。


「一燈を提げて暗夜を行く」

まず、一足を踏み出すこと。

《迷わずに行けよ 行けばわかるさ》





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