人の心に灯をともす 5693 人を前に出す

【人を前に出す】5693




行徳哲男師の心に響く言葉より…



■シモーヌ・ヴェイユの言葉がある。

「与えるというものではないが、人にぜひ渡しておかねばならぬ大切な預かりものが自分の内にある」



■中国に「三宝」の教えというものがあるそうです。

三つの宝。

一つは、いつくしみ、慈だと。

一つは、倹、つまり、自分の私心をなくすこと。

三つ目がね、人を前に出すことだという。


これがね、三つの宝の一番、素晴らしい宝だそうです。

自分が前に出ようとしない、人を前に出すこと。

それは、肩の力がまったくない。

魅力的な方ってのは、何といっても、肩の力が抜けている人、身構えのない人。



■「悟り」とはばかになること。

あほになること。

利口ぶっていると悟れない。

禅とはその字の通り、単的に示すこと。

そして、禅とは「ため息」。



■俳優の萬屋錦之介さんが12億円ぐらいの借金で倒産したときに、私のところに訪ねてきたわけです。

そのとき私は錦之介さんに、「あなたは宮本武蔵を演じたら最高の役者でしょう。武蔵の剣というのは、何もかも捨てる、捨ててできあがったんだから、錦之介さん、あなたも何もかも捨ててしまいなさいよ」と、そう話したときに、錦之介さん、ワァーッと泣き出して畳に伏せてしまったんです。

で、それが過ぎ去った後に、元気が出てきて、それまで持っていた大邸宅を離れてアパートに移り住んだんです。


何もかも捨てちまえ、捨てなきゃならん、ということ。

禅とは、一つはため息、一つは忘れること、一つは捨てること。



(行徳哲男&田里亦無)対談より

『随処に主となる』致知出版社
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「人を前に出す」とは、私心なき心で他人を推挙(すいきょ)すること、斡旋(あっせん)することだ。


安岡正篤師は「東洋人物学/致知出版社」の中でこう語っている。


『斡旋とはどこからくるかというと、これはやはり情からくる、仁からくる、慈悲、愛情からくるのです。

人を愛するがゆえに、その人のためによかれしと、いろいろ世話をする、面倒をみる。

事を愛するからして、その事のために何くれと取り計らう、それを斡旋という。

人間が利己的であると、この斡旋ができない。

不精でもできない。

これは、なまなかの才能人、知恵、才覚の人よりずっと世の役にたつ。

人の用をなす。』



私心なき心とは・・・


自分を捨てること。

利口ぶらないこと。

あほになれること。

肩の力が抜けていること。


「人を前に出す」と言う言葉を胸に刻みたい。






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