人の心に灯をともす 5730 出会う人全部を味方に

【出会う人全部を味方に】5730



小林正観さんの心に響く言葉より…


空海と龍馬。

二人の決定的な共通項は、出会う人出会う人を全部味方にしていったことです。

味方になってくれ、と長広舌をふるって説得したりはしません。

ただ用件を、たとえばどこかの大名に「こういうふうにしたいのです」と自分の希望を伝えるだけで、ほとんどの人が「わかりました」と返事をした。

次から次 へとそのとおりになった。


なぜでしょうか?

ニッコリ笑う。

それだけで味方になったらしいのです。


坂本龍馬は、「人たらし」というあだ名を持っていました。

人に会ってニコッと笑うと、皆、たらしこまれてしまうというので、「人たらし」というあだ名がつけられました。


空海も同じです。

空海が乗った遣唐使船では、遣唐大使の藤原葛野麻呂(ふじわらのかどのまろ)をニコッと笑って惹きつけました。

同じく同船した橘逸勢(たちばなのはやなり)との場合もそうです。

橘逸勢は最澄とはあまり仲がよくなかった。


橘逸勢は、官費留学生であり、朝廷が認めた最澄よりも、私費留学僧の空海と出会った瞬間から仲がよくなります。

橘逸勢がなぜ最澄よりも空海に興味を持ったかというと、ニコッと笑った瞬間に、空海の人柄がすべて伝わってくるような笑顔だったからです。

橘逸勢は、嵯峨天皇に向かって「空海というすごい人がいる」と話します。

そこで嵯峨天皇が興味を持って、空海に会おうということになります。

空海がそのニコッと笑うという武器をたずさえて、嵯峨天皇に会いに行くと、嵯峨天皇も、出会った瞬間に、いきなり空海の味方になった。


青龍寺の恵果(えか)もまた、そうだったかもしれません。

恵果は、「あなたが来るのを私はずっと待っていた」と言いました。

空海はそれまでひと言も話をしたことのない高僧を初対面で味方にしてしまうような魅力の持ち主だったのです。


人の中で、比べて比べて、自分が努力して、がんばって抜きん出ようと思うよりは、出会う人出会う人全部を味方にしていったほうが、自分も楽だし、周りの空気も和みます。

がんばってがんばって、抜きん出るという方法論は存在しますが、ニコッと笑ったらどうでしょうか。


『淡々と生きる』風雲舎
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司馬遼太郎は愛嬌についてこう書いている。

『竜馬も、ニコニコした。

その笑顔が、ひどく愛嬌(あいきょう)があり、(おおみごとな男じゃ)と西郷はおもった。

漢(おとこ)は愛嬌こそ大事だと西郷はおもっている。

鈴虫が草の露を慕うように万人がその愛嬌に慕い寄り、いつのまにか人を動かし世を動かし、大事をなすにいたる、と西郷はおもっている。

もっとも、西郷の哲学では、愛嬌とは女の愛嬌ではない。

無欲と至誠からにじみ出る分泌液だと思っている。』《竜馬がゆく 五》



「運と愛嬌(あいきょう)がない人間はあきまへん」と言ったのは、松下幸之助翁。

愛嬌とは、可愛(かわい)げであり笑顔だ。

愛嬌や可愛げがある人はまわりから可愛がられるので、情報や人が集まる。


夏目漱石の小説「虞美人草(ぐびじんそう)」に、『愛嬌というのはね、自分より強いものを倒す柔らかい武器だよ』という会話がある。

どんなに実力があろうが、学問ができようが、笑顔と愛嬌のない人には引きがない。

上司や監督から可愛がられない社員やスポーツ選手には出番がないからだ。


出会う人全部を味方にするために…

笑顔と愛嬌力を磨きたい。




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