人の心に灯をともす 5712 西洋の敗北
【西洋の敗北】5712
エマニュエル・トッド氏の心に響く言葉より…
「西洋の敗北」は今や確実なものとなっている。
西洋の危機の核心は、アメリカ、イギリス、フランスにある。
そもそもこれらの国においては、政治的危機がすでに如実に現れている。
ウクライナ戦争の当事国としてはあまり重要ではなかったフランスだったが(兵器の生産が少なすぎる)、この最終段階に来て重要な当事国になってきた。
というのも、フランスは西洋同盟諸国の中でも、対ロシア制裁の影響で、経済と政治体制が最初に崩壊しそうになっている国だからだ。
対ロシア制裁は、ヨーロッパ経済をストレス状態に陥れた。
マクロン大統領の非合理的な行動、国民議会(下院)の解散、そして解散に伴って生じるカオス状態の原因の一部は、この戦争が引き起こした大衆層の生活水準の低下に見出すことができる。
イギリスの保守党の転落や、アメリカのトランプとバイデンの常軌を逸した対立もまた、 自由民主主義国家の解体によって引き起こされた内部の負のダイナミズムから生じたものである。
フランスのメディアの取材では何度も述べてきたが、西洋の敗北は、ロシアの勝利を意味するわけではない。
それは、宗教面、教育面、産業面、道徳面における西洋自身の崩壊プロセスの帰結なのだ。
日本は、ドイツ以上に二つ目の「西洋」、つまり「自由主義の伝統は持たないが近代的な西洋」に属している。
しかし日本もまた危機に直面している。
この点に関しては同様のことがロシアにも中国にも言えるが、非常に低い出生率がそれを示している。
日本はドイツと同じく、NATOが崩壊することでアメリカの支配下から解放されるだろう。
しかし日本はそれによって、韓国とともに、中国と独力で向き合わなければならなくなる。
ユーラシアの西側におけるNATOの崩壊が引き起こす日本の状況については、今後私もコメントを求められる機会が訪れるだろう。
しかし今すぐに言えるのは、アメリカとの関係にはかなり慎重になるべきだということだ。
アメリカが同盟国として信頼性がかなり低いことに今日のウクライナは気づいているわけだが、日本にとっては、中国との地理的な近さがアメリカとの同盟を必要不可欠にしている。
ロシアは(NATOの馬鹿げた言説とは逆に)ヨーロッパにとって脅威ではない。
それは日本にとって中国が東アジアの脅威であるのとは異なる。
最後に、これから脱西洋化が進むと思われる世界の中での日本の立ち位置について、短い見解を述べておこう。
西洋は、ロシアに制裁を科すことで、世界の大半から拒絶されていること、非効率的で残忍な「新自由主義的(ネオリベラリズム)資本主義」や、進歩的というよりも非現実的な「社会的価値観」によって、自らがもはや「その他の世界」を夢見させる存在ではなくなったことに気がついた。
中国だけではなく、インド、イラン、サウジアラビア、アフリカも、結局はロシアの「保守主義」、そして「国民国家の主権」というロシア的な考え方(もちろんそれは、ロシアの歴史の一部と考えられているウクライナに適用されるわけではない)をより好むようになったのだ。
この戦争において、「多極的な世界」というロシアのビジョンは、西洋が中心となる「均一な世界」というビジョンと対立している。
西洋モデルの政治的観点からすると、均質的であるべき世界・・・リベラル、資本主義、LGBTなど・・・の覇権的中心地はアメリカだ。
私は、日本の地政学的文化の深い部分では 「諸国家はみな同じ」というビジョンは受け入れられないのではないかと考えている。
「均一な世界」というアメリカのビジョンは、日本的観点からすると、 敢えて言えば「馬鹿げたもの」だからだ。
日本には、「それぞれの民族は特殊だ」という考え方があり、むしろ「それぞれの国家の主権」というロシアの考え方の方が日本の気質にも適合している。
実際はドイツでも、「すべての民族は同じ」という考え方は馬鹿げたものと見られるだろう。
ドイ ツでは「すべての民族は同じ」という考え方は表面的に受け入れられているだけなのだ。
受け入れることで、第二次世界大戦における自らの人種差別的な残虐行為を忘れることができるからである。
日本では私が考えるに、「独自の歴史」という感覚は「本能的」なもので、しかも「リアル」なものだ。
西洋の敗北は、日本が「独自の存在」としての自らについて再び考え始める機会になるはずである。
さらに、日本が西洋の一部としてではなく、ネオリベラルの極西洋(アメリカ、イギリス、フランス)と「その他の世界」の仲介役として自らを捉える機会にもなるはずだ。
『西洋の敗北』文芸春秋
https://q.bmd.jp/91/119/1477/__no__
「西洋の敗北」が一番如実に出ているのは、今回の「ウクライナ侵攻」に関する各国の反応だ。
我々は、日本のニュースだけ見ていると、世界中のどの国もロシアを非難しているだろうと思っている。
しかし、現実は、「制限付き」でロシアを非難したのは、北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、日本、韓国、コスタリカ、コロンビア、パラグアイだけだ。
つまり、西洋圏というのは、アメリカの同盟国か軍事的保護国だけになる。
逆に、ロシアへの積極的支持を表明したのは、ベネズエラ、エリトリア、ミャンマー、シリア、北朝鮮だ。
そして、形式的に「制裁なし」でロシアを非難した国は、いずれかの陣営を選択したわけではない。
非難すらしなかった国は、ブラジル、インド、中国、南アフリカだ。
これらの4ヵ国はロシアとともにBRICSを構成している。
返済できないのが明らかな貧しい人々に不動産ローンを高い利率で貸し付けた、道徳性ゼロの考え方によって起こったアメリカのサブプライム危機は、貧しい中でも成長しつつあった国々を唖然とさせた。
西洋の経済的無責任さを世界に示した世界金融危機の混乱の中で、アメリカの経済的支配に対抗して2009年にBRICSは創設された。
こうしたアメリカの無責任さに対し、ヨーロッパの無責任さも重なった。
実際、大規模な景気刺激策によって世界を景気後退から引き戻したのは中国だったのである。
ロシアを孤立させるはずだったこの戦争は、むしろBRICSの拡大につながった。
BRICSには、すでに、人口世界1位のインド、2位の中国が加盟しているが、新たに、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、イラン、エジプト、エチオピア、が加わることになった。
制裁を求める西洋は、世界人口のわずか12%を占めるにすぎない。
ブラジルは長い間、アメリカの同盟国だったが、いまやアメリカ大陸における主要な反米国となっている。
それでも西側陣営は、自分たちこそが世界の主だという考えを変えずに行動し続けている。
メディアも自分たちだけからなる「国際社会」に固執した。
かつて、西洋諸国は最も恥ずべき所業である「奴隷制」を実施したにも関わらず、「西洋諸国は道徳的に優れている」という滑稽な自負がある。
つまり、「白人の方が明らかに優れた存在だ」という考えが根底にあるからだ。
(以上、本書より要約)
元々、西洋諸国が経済的に成り立っているのは、後進国と呼ばれる低賃金の国からの輸入によるものだ。
かつての奴隷制度も同じだ。
そして、ヨーロッパではロシア制裁のためガソリンや電気代などのエネルギー価格が急騰している。
それに輪をかけて、移民政策の失敗のため、治安が悪く、社会不安が増大している。
そうであるにも関わらず、道徳的規範を広めようとするのは、かなり無理がある、ということに世界中が気がついてしまったのだ。
「西洋の敗北」は、宗教面、教育面、産業面、道徳面における西洋自身の崩壊プロセスの帰結。
今一度、我々は、「西洋の敗北」という言葉の真の意味を学ぶ必要がある。
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エマニュエル・トッド氏の心に響く言葉より…
「西洋の敗北」は今や確実なものとなっている。
西洋の危機の核心は、アメリカ、イギリス、フランスにある。
そもそもこれらの国においては、政治的危機がすでに如実に現れている。
ウクライナ戦争の当事国としてはあまり重要ではなかったフランスだったが(兵器の生産が少なすぎる)、この最終段階に来て重要な当事国になってきた。
というのも、フランスは西洋同盟諸国の中でも、対ロシア制裁の影響で、経済と政治体制が最初に崩壊しそうになっている国だからだ。
対ロシア制裁は、ヨーロッパ経済をストレス状態に陥れた。
マクロン大統領の非合理的な行動、国民議会(下院)の解散、そして解散に伴って生じるカオス状態の原因の一部は、この戦争が引き起こした大衆層の生活水準の低下に見出すことができる。
イギリスの保守党の転落や、アメリカのトランプとバイデンの常軌を逸した対立もまた、 自由民主主義国家の解体によって引き起こされた内部の負のダイナミズムから生じたものである。
フランスのメディアの取材では何度も述べてきたが、西洋の敗北は、ロシアの勝利を意味するわけではない。
それは、宗教面、教育面、産業面、道徳面における西洋自身の崩壊プロセスの帰結なのだ。
日本は、ドイツ以上に二つ目の「西洋」、つまり「自由主義の伝統は持たないが近代的な西洋」に属している。
しかし日本もまた危機に直面している。
この点に関しては同様のことがロシアにも中国にも言えるが、非常に低い出生率がそれを示している。
日本はドイツと同じく、NATOが崩壊することでアメリカの支配下から解放されるだろう。
しかし日本はそれによって、韓国とともに、中国と独力で向き合わなければならなくなる。
ユーラシアの西側におけるNATOの崩壊が引き起こす日本の状況については、今後私もコメントを求められる機会が訪れるだろう。
しかし今すぐに言えるのは、アメリカとの関係にはかなり慎重になるべきだということだ。
アメリカが同盟国として信頼性がかなり低いことに今日のウクライナは気づいているわけだが、日本にとっては、中国との地理的な近さがアメリカとの同盟を必要不可欠にしている。
ロシアは(NATOの馬鹿げた言説とは逆に)ヨーロッパにとって脅威ではない。
それは日本にとって中国が東アジアの脅威であるのとは異なる。
最後に、これから脱西洋化が進むと思われる世界の中での日本の立ち位置について、短い見解を述べておこう。
西洋は、ロシアに制裁を科すことで、世界の大半から拒絶されていること、非効率的で残忍な「新自由主義的(ネオリベラリズム)資本主義」や、進歩的というよりも非現実的な「社会的価値観」によって、自らがもはや「その他の世界」を夢見させる存在ではなくなったことに気がついた。
中国だけではなく、インド、イラン、サウジアラビア、アフリカも、結局はロシアの「保守主義」、そして「国民国家の主権」というロシア的な考え方(もちろんそれは、ロシアの歴史の一部と考えられているウクライナに適用されるわけではない)をより好むようになったのだ。
この戦争において、「多極的な世界」というロシアのビジョンは、西洋が中心となる「均一な世界」というビジョンと対立している。
西洋モデルの政治的観点からすると、均質的であるべき世界・・・リベラル、資本主義、LGBTなど・・・の覇権的中心地はアメリカだ。
私は、日本の地政学的文化の深い部分では 「諸国家はみな同じ」というビジョンは受け入れられないのではないかと考えている。
「均一な世界」というアメリカのビジョンは、日本的観点からすると、 敢えて言えば「馬鹿げたもの」だからだ。
日本には、「それぞれの民族は特殊だ」という考え方があり、むしろ「それぞれの国家の主権」というロシアの考え方の方が日本の気質にも適合している。
実際はドイツでも、「すべての民族は同じ」という考え方は馬鹿げたものと見られるだろう。
ドイ ツでは「すべての民族は同じ」という考え方は表面的に受け入れられているだけなのだ。
受け入れることで、第二次世界大戦における自らの人種差別的な残虐行為を忘れることができるからである。
日本では私が考えるに、「独自の歴史」という感覚は「本能的」なもので、しかも「リアル」なものだ。
西洋の敗北は、日本が「独自の存在」としての自らについて再び考え始める機会になるはずである。
さらに、日本が西洋の一部としてではなく、ネオリベラルの極西洋(アメリカ、イギリス、フランス)と「その他の世界」の仲介役として自らを捉える機会にもなるはずだ。
『西洋の敗北』文芸春秋
https://q.bmd.jp/91/119/1477/__no__
「西洋の敗北」が一番如実に出ているのは、今回の「ウクライナ侵攻」に関する各国の反応だ。
我々は、日本のニュースだけ見ていると、世界中のどの国もロシアを非難しているだろうと思っている。
しかし、現実は、「制限付き」でロシアを非難したのは、北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、日本、韓国、コスタリカ、コロンビア、パラグアイだけだ。
つまり、西洋圏というのは、アメリカの同盟国か軍事的保護国だけになる。
逆に、ロシアへの積極的支持を表明したのは、ベネズエラ、エリトリア、ミャンマー、シリア、北朝鮮だ。
そして、形式的に「制裁なし」でロシアを非難した国は、いずれかの陣営を選択したわけではない。
非難すらしなかった国は、ブラジル、インド、中国、南アフリカだ。
これらの4ヵ国はロシアとともにBRICSを構成している。
返済できないのが明らかな貧しい人々に不動産ローンを高い利率で貸し付けた、道徳性ゼロの考え方によって起こったアメリカのサブプライム危機は、貧しい中でも成長しつつあった国々を唖然とさせた。
西洋の経済的無責任さを世界に示した世界金融危機の混乱の中で、アメリカの経済的支配に対抗して2009年にBRICSは創設された。
こうしたアメリカの無責任さに対し、ヨーロッパの無責任さも重なった。
実際、大規模な景気刺激策によって世界を景気後退から引き戻したのは中国だったのである。
ロシアを孤立させるはずだったこの戦争は、むしろBRICSの拡大につながった。
BRICSには、すでに、人口世界1位のインド、2位の中国が加盟しているが、新たに、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、イラン、エジプト、エチオピア、が加わることになった。
制裁を求める西洋は、世界人口のわずか12%を占めるにすぎない。
ブラジルは長い間、アメリカの同盟国だったが、いまやアメリカ大陸における主要な反米国となっている。
それでも西側陣営は、自分たちこそが世界の主だという考えを変えずに行動し続けている。
メディアも自分たちだけからなる「国際社会」に固執した。
かつて、西洋諸国は最も恥ずべき所業である「奴隷制」を実施したにも関わらず、「西洋諸国は道徳的に優れている」という滑稽な自負がある。
つまり、「白人の方が明らかに優れた存在だ」という考えが根底にあるからだ。
(以上、本書より要約)
元々、西洋諸国が経済的に成り立っているのは、後進国と呼ばれる低賃金の国からの輸入によるものだ。
かつての奴隷制度も同じだ。
そして、ヨーロッパではロシア制裁のためガソリンや電気代などのエネルギー価格が急騰している。
それに輪をかけて、移民政策の失敗のため、治安が悪く、社会不安が増大している。
そうであるにも関わらず、道徳的規範を広めようとするのは、かなり無理がある、ということに世界中が気がついてしまったのだ。
「西洋の敗北」は、宗教面、教育面、産業面、道徳面における西洋自身の崩壊プロセスの帰結。
今一度、我々は、「西洋の敗北」という言葉の真の意味を学ぶ必要がある。
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