人の心に灯をともす 5788 観光の終焉

【観光の終焉】5788



城西国際大学教授、佐滝剛弘(さたきよしひろ)氏の心に響く言葉より…


筆者は観光が大好きな旅の申し子である。海外も含めた世界遺産のほぼ半分を制覇している。

国内も全市町村を訪れただけでなく、離島も含め集落単位で日本の隅々まで歩いている。


コロナ禍の間も移動の制限が解除されてからは精力的に国内各地を巡ったし、海外からの帰国時に72時間以内のPCR検査の義務がなくなってからは、渡航できなかった期間の穴埋めをするように再び海外を訪れ、観光の現場を歩くようにしてきた。

そのたびに思うのは、現地に赴き五感でその土地の息吹を感じ、そこで暮らす人々と交流することの大切さであり、それはイコール「観光」の大切さの確認でもあった。


そこで思い出すのが、2017年にデンマークの首都コペンハーゲンの市当局が発表した「観光の終焉」という提言である。

英文では、 「THE KING IS DEAD! WONDERFUL COPENHAGEN CONCLUDES THE END OF THE ERA OF TOURISM, AS WE KNOW IT. (王は滅んだ。素晴らしきコペンハーゲンは、『観光の終焉』を決定した、すでにお伝えしたように)」と訳されている。


デンマークは人口およそ600万人の小国だが、2019年には人口の2倍以上にあたる1328万人ものインバウンドを受け入れている。

しかし、団体で 大挙してアンデルセン童話の人魚姫の像などを見てそそくさと帰っていく観光客はいらない。

無理してインバウンドに合わせるのではなく、普段の生活を見てもらい、共感してもらい、 場合によってはそこから新たな文化を共創していこうという観光戦略の転換を、「終焉」と いう強い言葉で打ち出したものである。


そもそも政府が進める観光振興策は、経済的な側面だけで効果を測ったり、富裕なインバウンドを受け入れることが最優先されるような風潮だったりすることが目立っている。

本書では、その危うさをきちんと指摘したかった。

その認識がないと、「観光立国」は表面的な掛け声で終わるのではないかという危惧が筆者にある。


『観光消滅』中公新書ラクレ
https://q.bmd.jp/91/119/2611/__no__





日本が観光地として選ばれる最大の理由は、円安だという。

世界各地の物価の比較としてわかりやすいのが、ビックマック指数だと言われている。

マクドナルドのビックマックを現地通貨で比較したものだ。


2025年1月時点のビックマックの日本での価格は480円(一部で高い店舗がある)、となっている。

為替によって日々変わるので、1月11日現在の比較だ(Big MacIndex.jpより)。


1位 スイス  1201円

2位 ノルウェー  1013円

3位 ユーロ圏  888円

4位 アメリカ  880円

5位 イギリス  864円

6位 スウェーデン  859円

7位 カナダ  828円

8位 デンマーク  819円

19位 韓国 575円

21位 中国 530円

●23位 日本 480円

29位 台湾 362円


つまり、日本よりビックマック指数の高い国の人たちは、日本の物価は安いと思い、インバウンドでやってくる、ということだ。

よって、今後、日本はますますインバウンドが増える。

そして、デンマークの「観光の終焉」という言葉が重くのしかかってくる。


観光地の施設をさっと見て、短時間で次々新しい観光地を回るのが「交流人口」。

現地の人たちと交流して、じっくり滞在するのが「関係人口」。


これからますます、人手不足は加速し、観光は消滅の危機を迎える。

だからこそ、我々は、デンマークのように、「関係人口」の増大を目指す必要がある。


「観光の終焉」という言葉を重く受け止めたい。




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