人の心に灯をともす 5656 量は質を凌駕する

【量は質を凌駕する】5656



森信三氏の心に響く言葉より


■閃(ひらめ)く言葉

書を読むには必ず閃く言葉に注意すべし。

閃く言葉とは、著者の心血の結晶なればなり。

故に良書といわれる書ほど、この閃く言葉を蔵す。

之等(これら)を手掛かりとして味わっていれば、やがては全体の分かる時も来るものなり。



■多読して

できるだけ多くの書を求めて、多くの書を読むべし。

われら常人にあっては、人生を新しくし溌溂(はつらつ)たらしむるは、まず読書から始めるに如(し)くはなし。



■書物というものは、読んでいる間だけ面白ければそれで良し。

それ以上を望むは欲なり。

覚えよう覚えようとして苦しむは不可なり。

料理も咽喉(いんこう)を通る間が旨(うま)ければそれで良きと同様なり。

書物を読んでいる間が面白ければそれでよし。

併(しか)し如何に覚えようとせずとも、一冊読めば二、三箇所くらいは、忘れようにも忘れられぬ箇所があるものなり。

そしてかかる箇所は、わずかに二、三箇所にしても、いつまでも心に残って、千変万化、機に臨み時に応じて活用できるものなり。


『下学雑話(かがくざつわ)』致知出版社
https://q.bmd.jp/91/119/517/__no__






■一冊の本を読めば、そこには必ずなにかしら、心に響く言葉なり文章に出会う。

それは人との出会いと同じだ。

森信三氏はそれを「人間は一生のうち逢うべき人には必ず逢える。 しかも一瞬早過ぎず、一瞬遅すぎない時に。」と言った。


■ドイツの哲学者、ヘーゲルは「量質転化の法則」を唱えた。

量を積み重ねていくと、質的な変化が起こるというものだ。

つまり、質を高めたければ、「質が変化するまで量をこなす」ことが大事だということ。

「量は質を凌駕(りょうが)する」。

読書もまた同じだ。




森信三氏は、「読書は心の食物。肉体を養うために毎日の食事が欠かせないように、心を豊かに養う滋養分として読書は欠かせない」と常々言っていた。

また、「真の読書は、人がこれまで体験してきた人体体験の内容と意味を照らし出し、統一する光です。

私達は平生(へいぜい)読書を怠(おこた)らぬことによって、常に自分に対する問題を深め、それによって正しい実践の出来る人間になることが何より肝要です。

言い換えれば、読書、内観、実践という段階の繰り返しは、人間が進歩、深められてゆくプロセスとも言えます」、と。



また、碩学(せきがく)・安岡正篤氏は「人物」を磨くための条件として、次の二つを挙げている。

一、すぐれた人物に私淑(ししゅく)すること。

二、魂のこもったすぐれた書物を読むこと。 (小さな人生論2 /小さな人生論シリーズ・致知出版社)より



「量は質を凌駕(りょうが)する」という言葉を胸に刻みたい。






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