人の心に灯をともす 5806 与え好きこそ生き方上手

【与え好きこそ生き方上手】5806



舩井幸雄氏の心に響く言葉より…


世の中というのは非常にうまくできていて、与える者が受け取る者なのです。

その「与え好き」の大切さを私に教えてくれたのは、Aさんという人物でした。

Aさんは戦後、シベリア抑留から帰国して、裸一貫から中部地方のある百貨店を地域ナンバーワンにまで育て上げた人ですが、彼の与え好きは尋常ではないレベルにまで達していました。


なにせ、中元や歳暮の時期になると、商圏内のほとんどすべてといっていいくらい多くの家庭にいちいち品物を贈るのです。

その数は膨大で、かかるお金も莫大です。

そこで私は、「そんなお金があるなら、もっと社員の給料を上げたらどうですか」と忠告しました。


すると、彼は私の顔をじっと見つめて、十分間くらいだまっていましたが、やがて、あきれたような顔で、「船井さん、あんたは頭がいい人だと思っていたが、じつは大バカ者だね。そんな考えでよくコンサルタントが務まるものだ」 と言い放ちました。


人にものをあげるほどプラスになることはない。

しかし、お金もものも、ただあげられるものではない。

大義名分がなければ与えられない。

中元や歳暮はその絶好の機会なのだ。

それにいちゃもんつけるとは、あなたは経営コンサルタント失格だというのが彼の言い分です。


そう決めつけられて、若い私も頭に血が上りました。

売り言葉に買い言葉で、「よし、どっちが正しいか、実験してみようじゃありませんか」と挑戦状をたたきつけたのです。

どういう実験かというと、私とAさんの両方を知っている身近な人をリストアップして、Aさんはその人たちに徹底して贈り物をする。


一方、私は何もしない。

それで一年後、二人は大ゲンカをする。

ただし、あきらかに私のほうに理があるケンカをする。


さて、身近な人はどちらの味方をするか・・・。

Aさんは、「理は舩井さんにあっても、ほとんどおれにつく」と 自信満々です。

私は私で、理はこっちにあるのだから、みんな自分の味方になると思っています。

結果はどうだったか。


なんと八割の人がAさんの味方をしたのです。

つまり、理よりも、ものをもらったことへの情が勝ったのです。

私の完敗でした。

その後、いろいろ調べてみると、ただでものをあげていると、やがて数倍の見返りがあることもわかってきました。

いい会社、伸びている会社ほど、ものをあげるのが上手なのです。


以来、私はうちの社員に「とにかく人がきたら、ものをあげろ。あげるものがなかったら、ただで教えろ」といっています。

損得抜きで、見返りを求めず、人に与える。

そういう「ギブ・アンド・ギブ」を実践する人こそ、多くを得る人。

与え好きこそ生き方上手といえるのです。


『法則 マクロに発想する』サンマーク出版
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「ギブ・アンド・テイク」は何かをしたとき、何かの見返りを求める、という考え方。

持ちつ持たれつという関係だ。


また、「ギブ・アンド・ギブ」という言葉もある。

相手に見返りを求めず、ただ与え続けることをいう。

自分の「我」を捨てて、ただただ、人に喜んでもらうことをすること。

「おかげさま」の気持ちでする行為だ。

それがまさに、良寛さんのいう、「俺が、俺がの、我(が)を捨てておかげ、おかげの、下(げ)で生きる」。


また、「忘己利他(もうこりた)」という伝教大師最澄(さいちょう)の言葉もある。

自分のことは忘れて、他人のために尽くすことをいう。


あげるものは、モノやお金でなくても、自分のとっておきの情報や、ノウハウでもいい。

与えるときには、出し惜しみをせず、ケチケチしないこと。

恩着せがましく与えることほどカッコ悪いことはない。


「与え好きこそ生き方上手」という言葉を胸に刻みたい。





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